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探偵小説家・天城 一 の最初 の作品が 「不思議な国の犯罪」(「不思議の国の犯罪」) であることは、ルイス・キャロルへのオマージュと受け取れ、いかにも 数学者 兼 作家 という自覚を感じさせるが、 この作品を “デビュー作” に選んだのは江戸川乱歩で、必ずしも天城本人の意思というわけではないようだ。

天城は乱歩を追悼した 「乱歩先生の思い出」〔《推理小説研究》創刊号、1965.11.〕 の中で、次のように書く (乱歩の死は、65年7月28日)。

すなわち、この作品が 「不思議な国の犯罪」 というわけだ。 一年後に筆を絶ったというのは、やや極端な表現で、作品は断続的に発表され続けていた。
アンソロジーに天城の作品が採られることは少なくなかったし、同人雑誌の特集や個人出版の本も存在するが、 2004年刊行の日下三蔵 編 『天城 一 の密室犯罪学教程』 (日本評論社) が初の商業出版と言える。
これの好評を受け、2005年には、やはり日下三蔵の編集で 『島崎警部のアリバイ事件簿』 が発売された。
故・鮎川哲也に献辞を捧げた、鉄道ミステリがメインの短編集だ。

追記。 2006年には長篇を含む 『宿命は待つことができる』 も上梓されたが、天城 一氏は 2007年 11月9日、肺炎のため死去した。88歳。