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その名もエルシー、レイシー、ティリーといったとさ。
(and their names were Elsie,Lacie,and Tillie)

ガードナーも示唆するように three little sisters 「3人のおさない姉妹」は、three Liddell sisters 「リドル家の 3姉妹」のシャレと考えられる。
Elsie は長女 Lorina の L と、そのミドル・ネームCharlotte の C 、要はイニシャルの LC を名前にしたもの。
Lacie は Alice の綴りかえ(アナグラム)。
Tillie は Edith の愛称(Matilda の中の部分を、さらに愛称化したもの)。

作中人物アリスが、さらに別の“アリス”たちの話を聞くという、二重の入れ子構造になってややこしいが、 基本的 には内輪ウケ狙いというべきで、翻訳にも特に反映させるような工夫はしなかった。


ただし“内輪ウケ狙い”といっても、この挿話が書かれた頃、キャロルと3姉妹との実際の交流は、ほとんど途絶えていたはずだ。
3姉妹を匿名にしたことを含め、このエピソードに微妙なニュアンスを感じ取ることはできるかも知れない。
3姉妹の登場は、何らかの展開を読者に期待させるだけに、『不思議の国』でもとりわけ中途半端なエピソードという印象を与えているが、 『コンピュータの向こうのアリスの国』が指摘するように 7章の全体が、ないものをあるかのように言うモチーフに貫かれているのだとすれば、むしろ尻切れとんぼで終わるのが当然だ(「答えのない謎々」と同様である)。
アリスの犯した誤り  「ない」と言われた席が「ある」と言って席に着いたこと、に対するお茶会メンバーのしっぺ返しは、アリスが憤慨して席を立つまでエスカレートする一方だったと言えよう。