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いくらも歩かないうちに、三月ウサギの家が見えて来た。2本の煙突は耳の形をし、屋根は毛皮でふいてあるから、あの家に、まちがいない。
( She had not gone much farther before she came in sight of the house of the March Hare: she thought it must be the right house,because the chimneys were shaped like ears and the roof was thatched with fur. )


トーベ・ヤンソンが大人向けに書いた小説 『誠実な詐欺師』 (冨原眞弓訳。 〈トーベ・ヤンソン・コレクション〉 2、筑摩書房、1995.→〈ちくま文庫〉2006.) では、 ヤンソン自身を思わせる老いた女性作家の住む家が 「兎屋敷」 と呼ばれている。

冨原眞弓は解説で、この 「兎屋敷」 の描写が、『不思議の国』 の 「三月ウサギの家」 に似ている、と指摘している。


絵かき唄ふうの 「Mr.C と Mr.T の お話」 でも、キャロルは猫の耳を “煙突” に例えている。
これはロジャー・グリーン編集の旧版 『キャロル日記』 に、巻末付録として、キャロルの “小さな友人” のひとりだったメアリー・バロウズ(ニヴェット夫人)が記憶していたものが掲載されている。
下図は、キャロルが 1895年に E.R. ベインズに送った本の中から発見された猫の絵だが、尾が C、耳が A 、顔が T の字になっていることに、お気づきだろう。 日頃から手すさびに書いて、子ども達に教えていたと思われる。
ジョン・フィッシャー〔John Fisher〕 『キャロル大魔法館 〔The Magic of Lewis Carroll〕』(1973. 高山宏訳、河出書房新社、1978. 316-9頁) を参照のこと。
C A T