みんながみんな生きてれば、とまどうことばかりなの。――
(how confusing it is all the things being alive;)
箴言。もしくはそのパロディ。
グレゴリー・ベイトソン『精神の生態学へ』〔Gregory Bateson “ Steps to an Ecology of Mind ” 1972. 〕の第一篇 メタローグ
「輪郭はなぜあるのか “ Why Do Things Have Outlines?”」〔初出《ETC.:A Review of General Semantics》Vol.XI、1953.〕では、
「徹底的に混乱した世界」の例として『不思議の国』のクロッケーを語っている。
娘 ねえ、パパ、みんな生きていないといけないのかしら。そうでないと、あんなにメチャクチャにはならないわよね。
父 いや、生きていないものでも――。待てよ。そうだよ。おまえの言う通りだ。いや、これは面白い。生き物を使わないと、まったくの予測不能な世界というのは作れないんだな。
ほかのやり方じゃ、いつかはプレイヤーに対処の仕方を覚えられてしまう。グラウンドをデコボコにしても、いびつな球を使っても、木槌のヘッドをグラグラにしておいても、ゲームは難しくなりはしても、不可能にはならない。
ところが生き物を持ち込むと、とたんにゲームが成立しなくなる。いや、これはパパも気がつかなかった。
〔引用は佐藤良明 訳、〈岩波文庫〉上巻、2023. 95頁〕
(最終更新 2023年 5月14日)