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けっきょく、アリスは両腕を、うんと広げてキノコにまわすと、両手の先で、かさのふちを、ひとかけらずつ、もぎとった。
( at last she stretched her arms round it as far as they would go,and broke off a bit of the edge with each hand. )

橋本治は、森毅 編『キノコの不思議 ―「大地の贈り物」を 100% 楽しむ法』(光文社〈カッパ・サイエンス〉、1986. 文庫版 1996.)に 書いたエッセイ「森の不純物」の中で、キノコについてフェティッシュな魅力を語る。

キノコの味を想像する過程で“トムとジェリーの穴アキチーズ”(かつて日本ではガス・ホールの開いたチーズなど市販されていなかった)に触れたあと、 キノコの料理、というものに魅力を感じる人の多くは、根底に童話的なイメージを持っているのかも知れない。
橋本治のエッセイの主題は“キノコとは、森の不純物が凝ったものである”ということのはずなのだが、アリスのキノコ に抱いている印象が明るいため、幸福な記憶がメインの“分らん話”になってしまっている。
知的なライターで『アリス』に これほど楽天的なイメージを持っている人は、稀有な存在のように思う。