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「絵も、せりふもない本なんて」って。
(“without pictures or converesations?”)

すぐ前の地の文に it had no pictures or converesations とあり、全く同じフレーズが反復されている。
そのまま訳しては芸がないように思われるので拙訳では「イラストも、話しことばもない」として訳し分けたが、 通例、日本語以上に同語の反復を嫌うとされる英語表現で、同じフレーズを用いるというのは相当の強調と考えられる。
つまりそれだけイラストや会話の掛け合いに私は重きを置いているという、キャロルの宣言文と読める。

もっとも、同じフレーズの反復というのは『不思議の国』の文体の大きな特徴でもあり、たいていユーモラスな効果をあげるために用いられている。
しかし邦訳では、同語反復をそのままに訳せない場合が多い(無理に同じ言葉を繰り返すと日本語としては、いびつになってしまう)のが残念だ。