その部屋には、あっちもこっちもドアがあったけど、みんなカギがかかってる。――
(There were doors all round the hall,but they were all locked;)
脇明子は 『少女たちの19世紀 ―人魚姫からアリスまで』(岩波書店、2013.)に、次のような類例を挙げている。
昔話的なモティーフとしては、〔ジョージ・マクドナルドの〕『お姫さまとゴブリンの物語』でアイリーン姫が塔への階段を見つける前にさまよう、「まわりじゅうドアばっかり」の廊下も印象的です。
これはペローの「青ひげ」やグリムの「フィッチャーの鳥」を連想させますし、日本の「見るなの座敷」 にも少し関係がありそうに思われます。
このモティーフはキャロルの『不思議の国のアリス』でも大きく扱われていますし、シャーロット・ブロンテの『ジェイン・エア』や、二〇世紀になってからですが、バーネットの『秘密の花園』などでも、深い意味を感じさせる使われ方をしています。
「青ひげ」や「フィッチャーの鳥」では、最後に禁じられたドアを開けると、血みどろの死体がある。
『ジェイン・エア』 は「青ひげ」を踏襲し、“部屋のひとつに屋敷の主人ロチェスター氏の気の狂った妻が幽閉されていた”。
『アリス』は、“見てはならないと言われた座敷に、梅の花が咲いて鶯が鳴いている”「見るなの座敷」 にパターンが似ているかも知れない。
(最終更新 2014年1月27日)