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アリスはぐんぐん大きく、大きくなって、たちまち、ひざをつくようになり、――あッというまに、それでも、きゅうくつになった。
( She went on growing,and growing,and very soon had to kneel down on the floor: in another minute there was not even room for this,)

Carroll's growing Alice 脇明子は 『少女たちの19世紀 ―人魚姫からアリスまで』(岩波書店、2013.)で、 この場面でキャロルが『地下の国のアリス』 に描いた挿絵のモデルは、ファンタジー作家ジョージ・マクドナルド〔George MacDonald, 1824-1905.〕の娘、アイリーン〔I rene〕だと推定している。
1863年7月末にキャロルはマクドナルドの家に一週間滞在し、マクドナルド一家の写真、なかんずくアイリーンの写真を何枚も撮っているが、その写真を手本にして『地下の国』の挿絵を描くつもりがあったのだろうという。
『地下の国』の本文は2月10日に完成していて、マクドナルド一家に読んでもらい、5月7日にはその感想を聞いていた。そこで好評だったことが『不思議の国』を出版するきっかけにもなるのだが、『地下の国』のほうにイラストを入れる作業はまだ残っていた。
“黒々とした縮れ髪を長く垂らした挿絵の少女は、明らかに、写真で見るアリス・リドルよりもアイリーン・マクドナルドのほうによく似ています。”
キャロルが本来のモデルであるAlice Liddell を、挿絵のモデルにしなかったことについて、脇教授は、キャロルとリドル家が疎遠になったことを理由と考え、疎遠になった理由に1863年6月16日の皇太子(のちのエドワード7世)のオックスフォード訪問を挙げる。
皇太子夫妻はリドル家の宿舎に滞在して、式典ではAliceたちも夫妻に挨拶し、リドル家の家格も高まって、キャロルには遠い存在になってしまったという推理のようである。
『地下の国』 は1864年9月13日に完成し、11月26日にAlice に贈呈された。

(最終更新 2014年1月27日)