『地下の国のアリス』にはキャロル自身が、縮んで頭と手足しか無くなったアリスのイラストを描いている(右図)。
稲木昭子・沖田知子『アリスのことば学 不思議の国のプリズム』(大阪大学出版会、2015.) 25頁で指摘されているように、あごが足にぶつかるのは、筒型望遠鏡式に、頭と足先はそのままで胴体部分が縮んだのである。
つまり、1章でのアリスの「どうにかして体を、たためないかな、望遠鏡の筒みたいに!」(how I wish I could shut up like a telescope!)という台詞は、設定としてまだ生きていたのだ。
2章冒頭で体が伸びる時も望遠鏡式だったが、このあとアリスの首がヘビのように伸びるのは その応用で、もはや望遠鏡式とも言えまい。
他の大きさが変わる場面では(少なくともテニエルの挿絵で見る限り)胴体も手足も同じ縮尺で伸び縮みしているらしいのは、ご愛敬である。
しかし幼児は、しばしば人物を表現するのに頭と足だけで描く。
この「頭足人」の絵に、キャロルの中にある幼児的発想を読み取ることも出来よう。
(最終更新 2015年 4月30日)