clasped hands は「両手(の指)を組む」ことだが、herがアリスを指すか、姉を指すかの判断に、少し迷わされるだろう。実際、アリスが自分の膝をかかえているように解する訳もあるが、続く the bright eager eyes were looking up into hers が対句のようになっており、この hers は「姉(の目)」を指すことが明らかだ。
『地下の国のアリス』の冒頭(第1章)に、本を読む姉さんと、その膝に肱をのせて寄りかかるアリスの姿が描かれていることからも、her knee は姉の膝と考えて間違いない。
このあと姉もアリスも she や her になるので少しややこしいが、意味を取りにくいというほどではないだろう。
ただ、ラストの心象風景では、アリスとその姉が溶けあい、最後には姉と作者自身が不分明になるわけで、案外キャロルは意識的に代名詞を混乱させたのかも知れない。