うまいあやし方(ヒモを結ぶみたいに体をねじって、右の耳と左の足を、しっかり、ばらばらにならないように、にぎっておくんだ。)
( the proper way of nursing it (which was to twist it up into a sort of knot,and then keep tight hold of its right ear and left foot,so as to prevent its undoing itself), )
赤ん坊の手荒な扱い方では、ディケンズ『大いなる遺産〔Great Expectations〕』(1860-61.)のポケット家の団欒の様子が『不思議の国』 6章に先駆けている。
以下は石塚裕子訳〈岩波文庫〉版(2014.)第二部 第3〜4章(22〜23章)からの引用。
“とうとう、ミラーズ〔子守り〕が赤ん坊を抱いてやってきて、フロプソン〔子守り〕に赤ん坊を手渡し、今度はフロプソンがポケット先生の奥さんに手渡そうとしたのだけれども、そのとき、自分自身も赤ん坊もろともつまづいて、ポケット先生の奥さんへとまっさかさまに雪崩こんでいったので、ハーバートとぼくとで支えてやることになった。”〔上巻、384頁〕
“ポケット先生の奥さんは〔中略〕、膝の上で赤ん坊を下手くそにちょっとゆすってあやしていたが〔and inexpertly danced the infant a little in her lap,〕、その間、他の子どもたちはまわりで遊んでいた。”〔385頁〕
“「そんな風にお受け取りになっちゃいけません。じゃないと、赤ちゃんの頭がテーブルの下に突っ込んでしまいますから」/ こう助言されるとポケット先生の奥さんは逆さに赤ちゃんを受け取って、頭をテーブルの上にぶつけてしまった。そのびっくりするような激震ときた日にゃ、居合わせた人たちみんなが気づくほどだった。”〔394頁〕
“フロプソンは赤ん坊を、継ぎ目のある木製人形みたいに二つ折りにして〔by dint of doubling the baby at the joints like a Dutch doll,〕、ポケット先生の奥さんの膝の上に無事に載せ、遊ぶのにくるみ割り人形を持たせた。”〔394頁〕
“〔前略〕ぼくは気が気じゃなかった。とうとう、ジェイン嬢ちゃんが赤ん坊の幼い脳味噌が危険にさらされていることを察知して、そっと自分の席を離れ、あれこれとなだめすかして危険な凶器〔くるみ割り〕を取り上げた。”〔395頁〕
「Dutch doll オランダ人形」のような継ぎ目というのは、要するに腰のところで二つに折り曲げたというのであり、ユーモラスではあるが、ノンセンスというわけではない。
(最終更新 2015年 1月18日)