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「そのダイナって、だれなの? なんだか、聞いたら、まずいことのような気もするけど」と、オウム。
(“And who is Dinah,if I might venture to ask the question?”said the Lory.)

最初、拙訳では「そのダイナって、だれなの? 失礼だけど、よかったら教えてよ」としていた。
通常の意味としては、そういうことで間違いないのだが、ここはオウムがそんな話を切り出してしまったために、 アリスが(鳥たちにとっては危険な)飼い猫の話を始めてしまう、という含みがあるので、それをふまえて改訳。
venture の「あえて危険を冒す、(生命などを)危険にさらす」という原義が、巧みに利用されたジョークと とらえるべきだろう。
つまり、「もしかしたら、その質問をすることで、私は危険を冒すかも知れない」と読める。

こういう慇懃な常套句を逆手に取った言葉遊びは、まさにキャロルの本領。
見方によれば、キャロルは “クイーンズ・イングリッシュをパロディ化 した” とさえ言えるのではないかと思う。


ダイナの話を持ちだすのが、Alice の姉の化身の Lory「オウム」であることにも、楽屋オチ的な“意味”が透けて見える。
(もともと Dinah は、姉 Lorina(ロリーナ)が飼っていたが、Aliceが非常に可愛がったため、お下がりになったペットだ。)
姉の澄ましたセリフに、姉妹の会話も想像できそうな、愉快なシーンと言えそうだ。

(最終更新 2015年 5月31日)