直訳体で正確に意味を伝えようとすると、「ニヤニヤ笑いを浮かべた口のはばをちょっとひろげただけ」(高橋康也・迪訳)のようになり、やや日本語の流れがよどんでしまう
(少し口を広げて、にやついただけ、程度の訳でも意味が通じないことはないが、変な日本語だ)。
拙訳では、ひとつ前の段落の最初のフレーズ The Cat only grinned を 「にッとしただけだった」と訳し、こちらはこんなふうにしてみた。
その工夫が巧くいったかどうかは読者に判断をおまかせするしかないが、日本語の長所のひとつは多彩な擬態語表現にあり、翻訳においてもそれを利用しない手はないだろう。