ガードナーは 『詳注アリス』(1960.) で、as mad as a March hare 「3月のウサギのように狂っている」 という古来からの言い回しの意味を、3月はウサギの発情期であるという説に求めた。
この説はそのまま諸訳の注や、別宮貞則 『「不思議の国のアリス」を英語で読む』(1985、1993、2004.) などにも採用されたが、『新注アリス』(1990.) にあるとおり、野ウサギの繁殖期は 8ヶ月にもわたり、語源説としては疑わしい ( 『決定版 注釈アリス』(2000.)では、古い注の部分が削除されている)。
漫画雑誌 《パンチ》 は 1841年の創刊なので、1842年版というのは最初 に出した 『年鑑』 である。
その当時、キャロルは10才だったが、M.ハンチャーはキャロルが後年この年鑑を見ていた可能性を指摘する。
しかし、この年鑑からの影響を論ずべきなのは、キャロルよりも、まずテニエルだろう。
三月ウサギの頭に藁を巻いて見せたのはテニエルであり、『不思議の国』 の本文に、三月ウサギが藁を頭 に載せているというような記述は全く無い。
キャロルが、三月ウサギの頭の藁に言及 するのは、『子ども部屋のアリス』(1889.) においてのことだ。
(最終更新 2015年 3月 8日)