「ウサギ・シロ−」(“W.RABBIT”)
表札で白ウサギの「白」を「四郎」と掛けるのは、明治末に丹羽五郎『子供の夢』(のち改題して、うさぎ山人『お正月お伽噺』。
いずれも1911.)の中で「宇佐木四郎」とされたのが最初と思われ、以来、多くの訳に用いられている。拙訳も、その翻訳伝統を引き継ぐことにした。
なお、最初の永代静雄訳は、なぜか「兎三郎」。
安井泉は、次のように解説している。
英国では表札が かかっていることはないので変な感じです。
W.Rabbit は White Rabbit(白ウサギ)のことですが、W.を人間に置き換えればW.は十中八九William の略とされるものです。
William はイングランド人の代表的な名前ですから、白ウサギの家の下男 Pat との関係はおのずと透けて見えてきます。
〔安井泉編著『ルイス・キャロル ハンドブック アリスの不思議な世界』七つ森書館、2013.、46頁〕
もっとも、当時、表札が特 に珍しいものだったかは疑問だ。
シャーロック・ホームズ最初の作品 『緋色の研究〔A Study in Scarlet〕』(1887.) 4章でも、
ジョン・ランス巡査の家に、ランスという名前を彫りつけた真鍮の板が打ちつけられていた。
(最終更新 2013年11月22日)