原典の紹介は一巻三号（1908.4.）まで。　その後は原典から懸け離れた創作ファンタジーに変貌した。
川端龍子 は日本画の大家のひとりだが、この頃は若書き。龍子の雅号を用い始めたのも〈アリス物語〉の連載中。

挿画は特に断書きはないがブランチ・マクマナスのもの。英文対照の訳で、当時としては抜きん出て正確なものだが、原文自体がリライト（特に2章以降、改竄が激しい）。原典の4章にあたる部分はなく“第三章”（内容は原典の5章）で中絶されたようだ。

→両書とも〈国立国会図書館デジタルコレクション〉で参照できる（『子供の夢』、『お正月お伽噺』）。
丹羽五郎（うさぎ山人） は籾山書店の籾山仁三郎（1878-1958）（小原俊一氏の研究による。→「『子供の夢』について」。大西小生「随想・籾山仁三郎」も参照されたい）。
丹羽自身は “日本化しやうと試みた”わけではないと書いているが、非常に日本語化された訳例で知られ、アリスは “綾子さん”（前項、丸山訳の“愛ちゃん”は、まだ当時においてモダンな名と言えるが）。
2章 ワニの詩は “昔丹波の大江山／鬼共數多籠(おにどもあまた　こも)りゐて／鬼が島をば打たんとて／どうしてそんなに遅いのか”。
3章 ネズミの無味乾燥な話（ノルマン・コンクェスト）は“お爺さんは山へ草を刈りに、お婆さんは川へ洗濯に参る”……という具合だが、全体に訳者の工夫が行きとどいた達意の文章で、再評価が期待される。
芳村椿花による中絵は、テニエルの絵を参照しているのが明らか。編者が確認したところでは、芋虫の絵など、あまりに稚拙だが基本はテニエルの造形そのままだ。 が､ここにも 「日本化」 は ほどこされ、吸っているのは水ギセルでなく、ふつうのキセルにタバコ盆が描かれている（→参考画像　原画は単色カラー）。
なお “不思議な初夢／洋服姿の白兎” は『お正月お伽噺』の標題紙にある記載だがサブ・タイトルと呼べるかどうか微妙。

原典の3章〜5章、9章〜10章が省略された抄訳。 同文庫 第壹編 『ガリヴワー大人國巡遊記』、第三編『希臘英雄伝』。
表紙・奥付に大溝惟一とあって、「はしがき」のみ“孤木”だが、当リストでは筆名、号を優先する形式で統一した。
→〈国立国会図書館デジタルコレクション〉で全文参照できる。

厳密には 1月号タイトルは「フシギナ　クニ」、2・3月号タイトルは「フシギ　ナ　クニ」という表記。5月号タイトルも同様（→参考画像 ）。
見開き2ページのカラー連載 （《幼年の友》は全頁オールカラーで創刊当初から絵本そのもののような雑誌だった。 毎号この連載の次のページが明らかにグリーナウェイの影響を受けた英国風のイラストであることなど注目すべき点が多い。 すでに大正6年の時点で、しかけ絵本的な付属品を表紙に貼り込んでいるが、これは大正中期の絵雑誌の大きな特徴）。
原典『不思議の国のアリス』のダイジェストに当たるのは2月号（三号）までだが、作者（署名なし）はおそらく原典を見ず、永代静雄の『アリス物語』（1908-09、1912.）をほぼそのままの形で幼年向けにリライトしている。 ただ『アリス物語』では主人公はセーラー服を着た“アリス”だが、〈フシギナ　クニ〉シリーズの主人公は和服姿で“マリコ”という。 また、『アリス物語』では描かれてはいても目立たなかったテニス（原典の8章クロッケー）のシーンがイラスト化されたことで印象的なものになっている（→参考画像 2月号（部分））。
戦前の作品で、タイトルを“ふしぎの”でなく“ふしぎな”としたものは、本作と大正末（1925.）の『まりちゃんの夢の国旅行　ふしぎなお庭』しか確認されていない。
大正6年には永代静雄は同じ実業之日本社の《日本少年》に冒険小説を連載し始めており、永代自身によるリライトの可能性も高いが、担当の画家（川端龍子と思われる）が文章も担当した可能性も高い（特に川端は、この年 院展同人に列せられたほどの画家ながら、イラストレーターとして実業之日本社専属の形で活躍すると同時に、さかんに少年少女ものの小説を執筆していた）。

《日本幼年》版は連載の全体が確認されていないものの、鼠のアリスに対する“『サアサア私ノ背中ニオノリナサイ。』”という台詞が、“それぢや私の背中にお乘りなさい。”となっているように、改編されながらも、ほとんどの部分が『幼兒に聞かせるお話』に引き継がれている。
『幼兒に聞かせるお話』は、初版と増訂版では活字の組からして異なる（文章そのものは同じ）。増訂版の扉（標題紙）には 「幼兒に聽かせるお話／増訂改刻　第三版」 と記載されている。 加藤まさを のイラストも、初版と増訂版では全く入れ替えられた（アリスのものは各1葉。現在から見ると初版ヴァージョンのほうが、むしろ繊細）。増訂版の「アリス物語」は イラストを除き全18頁の短篇。
倉橋惣三（1882-1955.）は当時の保育理論をリードし、のちには《コドモノクニ》（創刊 1922.）、《キンダーブック》（1927.〜）の顧問として絵本雑誌のスタイルを刷新したほか、幼児教育全般に多大な影響を与え、「日本のフレーベル」「日本の幼児教育の父」と呼ばれている。
本書に収録された小話は保母が園児向けに再話して聞かせたもの（倉橋の筆が加わっているかどうかは不明　→（詳細））。 「アリス物語」も原典の枠組みは残されているが、アリスもののキャラクターを利用した通俗的な翻案と言ってよい。例えばラストは、“自働車”に乗った白兎を、鹿の背に乗ったアリスが追う （しかし追いつけず、河に落下して夢オチ）。他に“駝鳥”“毛蟲”“植木屋”なども登場。 内容は永代静雄版（1908-09、1912.）とはほとんど関係ないが、「アリス物語」のタイトルはそれを意識していた可能性が高い。

矢野滄浪（政二） 『勞務一家言　上』時事評論社、1919（大8）.7.
（→『國家一小言　上』時事評論社、1926（大15）.3.）

「第十章　自由平等」 に付したエピソードとして「實例（其十）　アリス物語中の鳥類會議」がある。
原典3章の一部の翻案だが、“鳥類の『自由平等會』”がコーカス・レースの訳ということになろうか？
もっともレースの場面などは無く、“鵞鳥、鷹、鳶、烏、雀、眼白、燕、金糸雀(かなりや)等”が、“ビスケット分配案”を議題にする。 金糸雀は「個人を一単位として一人一個づつ、平等又均一」に分けると提案するが、いざその通りにして食べた時、鵞鳥などは“物足らぬ顔し、”“金糸雀などは咽喉にひきかけて、むせぶやら叫ぶやら、”という結果になる。 矢野は、こうした例から不平等こそが“自然の道”と説いている。 『國家一小言』でも同じ文章が「第七章　資本家」のあとに挿入されているが、挿入された理由がわからず、意味不明のエピソードとなっている。
→〈国立国会図書館デジタルコレクション〉で参照できる。

口絵は、芋虫等 明らかにテニエルを模しているが稚拙（画家不明）。挿画なし。
“「不思議の國」の方はかなり手が入って読みやすくなり、はしょってあった言葉遊びもおもしろく訳されているが、「鏡のうら」の方は語句の多少の修正と表記の変更にとどまっている。”（『翻訳の国の「アリス」』）
『鏡』の訳は例えば子猫のスノードロップを最初は“（犬の名）”とし、巻末では猫の“雪ちやん”とするなど、ずさんさが目立つ。
→〈国立国会図書館デジタルコレクション〉で全文参照できる。

グィネッド・ハドスンほか画。「はしがき」では“リュイス・キャーラル”。〈少年文庫〉85（1933.1.）は棟方志功 画『鏡の國』。
副題の「アリス物語」は芥川龍之介・菊池寛共訳（1927. 後出）から取られた。訳文自体も、共訳を参照して改良したものなわけだが、それ以前に芥川と菊池が、1920.版の楠山訳を かなり参照していた様子も共訳からは見てとれる。
もっとも楠山は永代静雄とも多少の面識があったと思われる。初の翻案 『アリス物語』 の作者だが、芥川も永代と面識があったと見られ、菊池寛がジャーナリスト永代静雄を知らなかったとも考えにくいため、（芥川や菊池が 永代をリスペクトしたとまでは言えないにせよ） このタイトルも一種の翻訳伝統として引き継がれて来たものと考えられる。
→〈国立国会図書館デジタルコレクション〉で全文参照できる。

「アリスの夢」、「かがみのうら」の合冊版。　この戦後版のタイトルは楠山が1933年のパラマウント映画を意識したものか。
→大戸喜一郎訳（1926、1934.）の項の木下信一説および私見を参照のこと。

ハリー・ラウントリィ画。「まえがき」では“リュイス・キャァラル”“ラトヴィジ・ドヂスン”と表記。「アリスの夢」単独版。
→〈国立国会図書館デジタルコレクション〉で全文参照できる。

装幀恩地孝四郎。熊田五郎挿画（のち熊田千佳慕を名のる。テニエルとハリー・ラウントリィの折衷的模倣。三島由紀夫訳などの絵でも知られる）。西山敏夫リライト（そのため、この本のみ“楠山正雄編著”となっている。楠山は上梓直前の11月に死去）。

テニエル画。解説　前田晁。

〔→ 楠山訳 『鏡の国』 〕

望月の本の奥付では訳者は青山三郎 （この点を初めて指摘したのは千森幹子『復刻集成』解説）。 全体を9章に縮めており、原典3章のコーカス・レースと鼠の詩、4章末（望月本では3章）の子犬の場面、5章末（同4章）の鳩の場面等々が略されている。
平倫子(くみこ)「「函館の貴重児童資料」に所蔵されていた幻の珍書　青山三郎訳『アリスの不思議國めぐり』（1927）について 改訂版」（《Mischmasch》 14号（2012.））によれば、1908年刊のリライト（Collins）の翻訳。 「青山訳『アリスの不思議国めぐり』再、再考」（《Mischmasch》 15号（2013.））によれば望月本と青山本は“口絵や挿絵のあるなしのほかは内容が同じ”。 『新訂増補日本著名者・人名典拠録』（2002.）には〈青山三郎（1903-81）、映画監督、本名=望月幸三〉とあり、監督は青山・脚本は望月として1930年代以降多くの映画を制作した、という。

1〜3月号まで、訳者名 “美子”、4月号以降 “羊子”（12月号のみ“美子”に戻っている。但し目次は“羊子”）。挿絵画家不明（高畠華宵風）。各回 「お伽奇譚 ……」 「少女奇譚 ……」 等の角書(つのがき)に相当するものが付されている。 各号、原典の 1章ずつを訳しているが、ノンセンス詩や言葉遊びは ほとんど省略。��虫の乗るキノコが“松茸”だったり、ロブスターが“伊勢鰕”だったりという日本化も見られる（→第10章の章題訳注も参照）。 7月号で“三月の野兎”のイラストが三ツ目に描かれているのは画家が“月”を“目”と読み間違えたためというのはキャロル協会員・鳥集あすか氏の発見。9月号（および10月号）では the Mock Turtle が何故か“嘲ふ海龜”と訳されている。

1926版と活字の組は同一で、「はしがき」も“『不思議國めぐり』”のまま修正されていない。
このタイトルの変更は、木下信一氏の研究によってパラマウント映画の邦語タイトルに合わせたものと解った。
（『The Rabbit Hole』−「パラマウント映画『不思議の國のアリス』」　→私見（大西小生））

楠山正雄訳（1920.）を明らかに下敷きにした翻訳。木下信一「菊池寛・芥川龍之介共訳『アリス物語』の謎」（《Mischmasch》10号（2008.））を参照のこと。
千森幹子『表象のアリス』（法政大学出版局、2015.）第六章によれば平澤文吉の線描画はマーガレット・タラントの挿絵を元に日本化したもの。
→〈国立国会図書館デジタルコレクション〉で全文参照できる（1927.版）。
古書としては、それほど珍しくない。かつて〈青空文庫〉に入るという話があったが立ち消えとなったようだ。

“ガアステンパアグ作” の戯曲で、『不思議の国』 と 『鏡』 のエピソードを自由に組み合わせている。門馬義幸氏の論考（「キャロルよもやま話」、《Mischmasch》 4号（2000.）所収）によれば、1915年2月シカゴのファイン・アート・シアターで上演されたものの翻訳で、次項 長澤才助訳注の書名に先立っている（書名に影響を与えたというより以上に言語感覚の同時代性と見るべきものかも知れないが）。
〈世界童話大系〉22巻には、シエエクスピア「眞夏の夜の夢」（柳田泉訳）、ヲルタア・ド・ラ・メエア〔ウォルター・デ・ラ・メア〕「クロツシング」（甫木山 訳）、ゴオルズワアジ「小さい夢」（有島武郎訳）、イエイツ「砂時計」（小山内薫訳）、グレゴリイ夫人「旅人」（楠山正雄訳）、スチユアアト・ヲオカア「そら豆が煮えるまで」（小山内訳）、バアネツト夫人「少公女」（甫木山 訳。ふつうは「小」公女と表記）などが収められ、巻末が「鏡の國」。 なお、この巻の奥付には 「昭和三年四月五日發行」 「昭和三年四月十日再版發行」 とあり、初版に注文が殺到したか、あるいは刷り直しか。

長澤（1900-53.）は早稲田英文科卒、明治学院等に勤務。日吉早苗の筆名でユーモア作家・児童文学作家として活動した。 長澤名義の訳書にイエーツ『日本の能樂』（1932.）、トマス・ハアディ『テス物語』（1933. 再話）。 日吉名義の訳書にオブラィエン『機械の舞踏』（1931.）がある。最初の長編少女小説は『峠の記念祭』（1943.）。「聖職」（1947.）で第1回夏目漱石賞候補、『悲しき神々』（1950.）で直木賞候補。ユーモア小説に『恋のヤブ醫者』（1953.）等、多数 （参考資料　『少女小説事典』東京堂出版、2015.）。

カヴァー・口絵 M．W．タラント。“不思議國のアリス”はカヴァー背の書題。カヴァー表および本体背の書題“ALICE IN WONDERLAND”。奥付書題“アリス・イン・ワンダーランド”。扉書題“WORLD'S CLASSICS IN ENGLISH／ALICE'S ADVENTURES IN WONDERLAND”。本文（英文対照の部分）最初の訳題は“アリスの不思議の國探險”。

口絵 M．W．タラント（モノクロ）。カヴァー未確認。“不思議國のアリス”は奥付書題。“ALICE/IN/WONDER-/LAND”は本体背の書題。　扉“CELEBRATED WORKS IN ENGLISH／ALICE'S ADVENTURES IN / WONDERLAND”。

カヴァー未確認。本体背の書題“ALICE'S/ADVENTURES/IN/WONDER/LAND”。扉1“リユイス　カロル／不思議の國のアリス”、扉2“ALICE'S ADVENTURES IN / WONDERLAND”。奥付“不思議の國のアリス　キヤロル”。

1931版表紙・カヴァー未確認。1951版カヴァー未確認。1951版本体背の書題“L. CARROLL　　ALICE IN WONDERLAND”。扉1“ALICE/IN/WONDERLAND /BY/LEWIS CARROLL”、扉2“研究社英文譯注叢書．第二〇／ALICE'S ADVENTURES/IN WONDERLAND／（不思議國のアリス）／BY／LEWIS CARROLL／岩崎民平譯註”。訳題“アリスの不思議國物語”。 1931版奥付“Alice's Adventures in Wonderland／〔右から左へ〕研究社英文譯注叢書　第二〇”。1951版奥付“研究社英文譯注叢書／ALICE'S ADVENTURES IN WONDERLAND”。
千森幹子 「幻に終わった初山滋画 『不思議の国のアリス』」（《Mischmasch》 4号（2000.）所収） によれば、この訳注書には初山滋の挿画が入る予定だった。 そのイラストは例えば、竹迫祐子（安曇野ちひろ美術館副館長）編 『初山滋　― 永遠のモダニスト』 河出書房新社〈らんぷの本〉（2007.　90-91頁） で見ることが出来るが、原画を 「出典不明」 としているのはまだしも、ジョン・テニエルのことを “ジョン・テニスン” と書くなど、その解説のアバウトぶりには唖然とさせられる。 より詳しくは千森『表象のアリス』（法政大学出版局、2015.）第三章 に分析がある（子豚とアリスを描いた初山のカラー・イラストにはメイベル・ルーシー・アトウェルの影響があるようだ）。

1952版表紙“ALICE'S/ADVENTURES IN/WONDERLAND／BY／LEWIS CARROLL”（カヴァー未確認）。1971版カヴァーの書題は“Alice's Adventures in Wonderland／ふしぎ国のアリス”、〈研究社新訳注双書〉である。1971版背は“ALICE IN WONDERLAND／ふしぎ国のアリス”。 1952版奥付“研究社新訳註叢書／（ふしぎ國のアリス）”。1971版奥付“研究社新訳注双書／ALICE'S ADVENTURES IN WONDERLAND／（ふしぎ国のアリス）”。 扉は いずれも“LEWIS CARROLL／ALICE'S ADVENTURES/IN WONDERLAND／ふしぎ國のアリス／岩崎民平訳註”。本文冒頭に訳題は無し。本文は旧字のまま直されなかった（一部、新字混じり）。

1973版奥付によれば“昭和四十五年十一月五日　二十版発行”。（小原俊一『文献目録』では1971.7.5.版で本文のページ数が減っている。この時点から改版か）
紙カヴァーが付いてからは、広みさおの、わざと稚拙に描いた絵が目を引いた。 　〔→旧版〈角川文庫〉（岡田忠軒訳）『鏡の国』〕

小栗虫太郎 〈二十世紀 鐵假面〉 博文館《新青年》、1936.5.〜9.号（一七巻六号〜一一号）→ 『二十世紀鐵假面』 春秋社、1936.9. →→→ 『二十世紀鉄仮面』 〈扶桑社文庫〉、2001.2.→〈河出文庫〉、2017.7.


アリスをモチーフに使った探偵小説で、本来このリストに載せるタイプの文献ではないが、書誌的に注目すべきポイントを挙げておく。
アリスの翻訳は長澤・岩崎の両訳注書､および楠山正雄の〈春陽堂少年文庫〉版あたりで一段落し､戦後までしばらく空白期間がある。
そのあとを まるで引き受けるかのように、この作品、さらに横井司 編 『不思議の国のアリス・ミステリー傑作選』（〈河出文庫〉1988.7.→『不思議の
国のアリス ミステリー館』〈同 文庫〉2015.9.）に収録の、
　邦正彦 「不思議の國の殺人」 《シュピオ》 1937.7.号（三巻六号）
　小栗虫太郎 「方子と末起」 《週刊朝日》春の大衆読物号、1938.5.2.（三三巻二二号・九三一号）（→ 『探偵時代小説集』今日の問題社、1942.5.）
と、ミステリーの分野で応用が目立つ（さすがに昭和十年代も後半になると時局がらアリスを受け入れる余地はなくなって来るようだが）。
〔以下、原文は旧字〕 「二十世紀鉄仮面」 作中の書名は 『不思議国のアリス』。説明文中にある “青虫や、泣き海亀や、ロック鳥” というのも訳と
して個性的で、ロック鳥 はグリフォンを指すか？
“口絵に 『胸着（チョッキ）を着た兎』” が載っているとあるからには、小栗の所蔵書もテニエルのイラストが挿入されたものではなく（テニエル版の
口絵は、ふつう法廷シーン）、マーガレット・タラント版か何かである可能性が高い。

〔→紙芝居・漫画リストへ〕

最終更新　2024年 6月16日