『不思議の国』書誌(紙芝居・漫画・アニメ・ミュージカル)
薄字部分は二次情報による記載で、編者自身は未確認。
※ ディズニーものは別項とします。
※ 特記しない場合、タイトルは『ふしぎの国のアリス』です。
〔作者不明〕〈フシギナ クニ〉、《幼年の友》實業之日本社、1917(大6).1.(九巻一号)〜 6.(七号) 〔→「戦前期リスト」〕
高橋五山著作兼発行者、日向眞画『アリス・モノガタリ フシギノクニ』全甲社〈幼稚園紙芝居〉第九輯、1937.10.
“監輯 濱田廣介先生”。奥付は「ふしぎの國」。説明書き冒頭の題は“ふしぎの國 アリス物語”。第十回配本、とある。タイトルは楠山正雄訳〈春陽堂少年文庫〉版から採られた。
序景を含めて全18枚。高橋五山(1888-1965.)は教育紙芝居の世界では知られた人物。
→『ふしぎの国 アリス物語』全甲社〈高橋五山紙芝居〉復刻第4巻、2012.2.
説明書きを現代仮名遣いに直したもの。「別冊付録」として五山の略年譜、作品解説などを記した冊子が付く(編集・発行人 高橋洋子)。
(→)高橋五山 文、油野誠一画『ふしぎのくにのアリスちゃん』日本紙芝居幻灯株式会社、1952.3.
教育紙芝居研究会 編集。日本紙芝居幻灯株式会社の代表者は高橋五山。全12枚。
こねこの“ディナー”という表記や、“穴の中を するするするする〔踊り字使用〕すべっておりました。”という内容から、ここでも楠山正雄訳を参照していたと思われる(楠山訳は“ずるずる”落下するが、これを改良したのだろう)。
この作を最初に扱った文献として高橋洋子「高橋五山の紙芝居『ふしぎの国アリス物語』(1937年刊)」(《Mischmasch》 14号(2012.))がある。
(→)高橋五山 脚本、佐藤ひろ子画、童心社(紙芝居)、1977.
横井福次郎 『ふしぎな國のプッチャー』講談社、1948.6.
『アリス』とは関係がなく、10万馬力の人造人間、“透明外套”、“テレヴィ”などが登場する空想科学漫画(形式は、どちらかと言えば絵物語)。“ふしぎの国”でなく戦後風に“ふしぎな国”と題した最も早い例か(初出 《少年クラブ》 1946.7.〜48.3.)。
横井福次郎(1912-48.)は人気作家だったが、これの続編〈冒険児プッチャー〉を連載中に病死。手塚治虫が『ふしぎな国のプッチャー』に刺激され、『メトロポリス』(1949.)等を描いたという話は有名。
小池愼太郎〔再話〕、高橋国利画 「ふしぎな国のアリス」、NHK(日本放送協會)編『学校放送 世界名作めぐり 名作編』寶文館、1950.12. 所収
→『学校放送 世界名作めぐり』寶文館、1954.
校内放送用の劇の台本。1950年2月11日、小学校高学年向けに福士夏江アナウンサーの語りでラジオ・ドラマ化されている。
奥付は名作“篇”と表記。1950版の内容は、バーネット作/小池「小公子」、ホーソーン作/筒井敬介「ゴールデン・タッチ」、オルコット作/筒井「リラの花かげ」、
キヤロル作/小池「ふしぎな国のアリス」、ペロー作(吉田行範訳)/小池「サンドリヨン」、アンデルセン作/小池「おやゆび姫」、ハウフ作/小池「石の心臓」、ヘッベル作/御荘金吾「ルビイ(紅玉)」、
トべ(ペ)リウス作(万沢まき訳)/伊藤海彦「すいれん」、トルストイ作/御荘「人にはどれだけ土地がいるか」、トルストイ作/筒井「ふか(鱶)」、抱雍老人作(渡辺末吉訳)/小池「百花村物語」、蒲松齡作(村上知行訳)/石川 年「労山の仙人」の13篇。 1954版は「傳説篇」15篇との合本。
“穴の中を、ファファファと風船玉のように、下へ落ちてゆきました。”という描写は独特。白うさぎが巨大化したアリスを見て“大入道だ。”と驚くのは土屋由岐雄訳に共通する。
涙の池のねずみとの会話の直後が、いも虫とのやり取り。“赤いキノコ”に乗り、“わしは学者だからな。”と語るのは面白いが、特に学者らしいことも言わない。挿し絵ではキセルをふかしている。
そのあとは「公爵夫人のやしき」で、夫人がアリスを女中扱い。赤ん坊がぶたになるとすぐ“おまんじゅう裁判”に続く。
中村ひろし〔裕〕『名作まんが ふしぎの国のアリスちやん』若木書房、1951.8.
トカゲの名前はBillでなく“ミッキー”。いも虫が乗っているのはベニテングタケふうの「赤いきのこ」。“たまうちあそび”の“バット”は“はねも ないのに お空を とべる”ダチョウふうの奇妙な鳥 (打たれる玉のほうは通常どおり“はりねずみ”。
ちなみに“コーカスレース”のドードーに当たる鳥はアヒルのような姿で描かれる)。
「海がめ」(Mock Turtle)は、顔が豚。なまけ者だったむくいで豚になったという(「豚の赤ちやん」のエピソードも別個に存在する)。ラストの裁判シーンは無し。
『ふしぎな国のアリス』曙出版〈世界名作漫画文庫〉23、1952.10.→1953.9.
漫画家が各章を分担した連作。茨木啓一「ふしぎなうさぎ」、川田漫一「巨人アリス」「長いくび」「チエーシャ ネコ」、
宮坂栄一「へんなお茶のかい」「女王さまの庭」、野沢和夫「おまんじゅうじけん」。
1952版と1953版では表紙・見返しが異なり、1953版の表紙は野沢和夫(1952版の表紙は画家不明だが、あるいは川田漫一か)。
1953版は扉の裏に「◇ご父兄、愛読者の皆さまへ◇」として“この物語は世界中の少年少女にしたしまれ、学校劇、朗読などされていましたが、こんど日本へも
アメリカの漫画家デイズニイにより色彩漫画として、しょうかいされました。”〔原文パラルビ〕と記され、ディズニー映画の公開に合わせた新装版と解る。
宮坂栄一はおそらく何冊かアリス本を参照しており、Dormouseは“山ねずみ”(ヤマネを山ねずみとする訳書は多い)、“ニセウミガメ”は顔がネズミのようでアトウェル版アリスの影響かと思われる。
女王の庭の“タマうちあそび”はゴルフクラブと白い(文字どおりの)ボールで行われ、これもある意味、戦後風で珍しい。
わたなべ・くにを〔渡辺邦男〕、中村書店〈ナカムラマンガシリーズ〉、1953.(8.)
おかだ・あきら〔岡田晟〕、若木書房〈傑作漫画全集〉1、1953.8.
奥付の記載は岡田あきら。絵柄はそれなりのオリジナリティがあり、アリスも初期の漫画の中では可愛いが、女王と王はディズニーの模倣。
“チェシャーねこ”の造形にもディズニーの影響が見て取れるほか、“グリッフォン”を名のる者が何故かディズニー・アニメのダムかディーの姿で描かれている。
キノコがテングタケふうで、“にせ海がめ”が豚顔なのは中村ひろし版の影響か?
“三月うさぎ”の三月には“みかづき”とルビが打たれ、Dormouseは“山ねずみ”。
「おもちゃランド」の章では自動車やエレベーターが使われ、ラストには気球が登場。
麦倉清志『世界名作漫画集 第1集』 日本敬老事業協会、1953.12.
以下、門馬義幸 「『世界名作漫画集』の『ふしぎの国のアリス』」(日本ルイス・キャロル協会ニューズレター〈The Looking-Glass Letter〉153号(2021.10.))から引用すると、
本書は「ふしぎの国のアリス」と「仔鹿物語バンビ」の 2編が掲載。アリスは赤服。白ウサギは“アワテうさぎ”とされ、『鏡』の“双子”なども登場。
全体にディズニーの模倣で、表紙絵は竹田洋子氏によると、やはりディズニー映画「シンデレラ姫」の 1場面を参考にしているとのこと。
高野・てつじ、金の星社〈ようねん漫画文庫〉3、1954.1.
高野てつじ(1901.-?)は、高野つる吉と同一人物 (国会図書館データ)。
アリス以外の絵柄は、ほとんどディズニー・キャラの劣化コピー(ただし“にせ海がめ”は、かなり独特)。
アリスがサメに追われたり、「うさぎの家」にアリ(蟻)が登場するなど脱線は多い。
Cheshire-Catは “にやけネコ”。March Hareを “三月野ウサギ”とも書き、Dormouseを “ノネズミ”とする。
“ボールが くまの 子どもで バットが べにづる”とするのは初期のディズニー絵本と同様。
大木雄二文、加藤まさを画、家の光協会《家の光附録 こども家の光》、1954.4.(三〇巻四号)〜6.(七号)
キャロル協会の木下信一氏が発掘した文献。各回見開き 2ページ。「絵物語」風に各場面を描いた横に数行の説明を加えたもの。
(→参考画像(部分) )
せき しろ〔関 四郎〕『世界名作長編漫画 ふしぎの国のアリス』集英社〈おもしろ漫画文庫〉123、1956.10.
冒頭では樹木が“おっかけ ごっこ”をしており、絵柄もシュール(杉浦茂、佐々木マキの系統を思わせる)。“にせうみがめ”は豚顔系。
平井房人(文画『ふしぎのくにのアリス』〈保育社のえばなしぶんこ〉3、1960.4.
いわゆる「絵物語」のような形式。オリジナル色の強い絵だが、原典のコーカス・レースに該当する場面で鳥やザリガニが踊っているところや“きちがいウサギ”(March Hare)の造形などに、いくぶんディズニーの影響が見られる。
(→この作品については私家本『Alice in Trash Basket』でも紹介しています)
川崎大治脚本、油野誠一画『ふしぎのくにのアリス』童心社(紙芝居)、1965.(→1981.)
立石範子文、中村和子・伊藤主計(スタジオ創企)画『ふしぎの国のアリス』偕成社〈カラー絵ばなし〉25、(1970.→)1971.12.(→〈カラー絵ばなし〉22、1983.12.(6刷))
(→私家本『Alice in Trash Basket』でも一部紹介しているが、“テレビ東京系・毎週月曜日放映”としたのは、この作のことでは無い。本の帯に書いてある文句をそのまま使ったのだが、1983年から放映されたTVアニメ「ふしぎの国のアリス」に便乗して増刷したものと考えられる。このアニメについては下記『テレビ名作絵本』〈小学館のテレビ絵本シリーズ〉の項を参照されたい。)
小原俊一『文献目録』では1971年版を〈カラー絵ばなし〉25と記載しており、83年版とは若干、構成等の異なる可能性もある(大西が確認した〈カラー絵ばなし〉は全24巻)。国会図書館データは1970年刊行とする。
平田昭吾(泣Aニメ企画)構成・文
山崎隆生画『ふしぎのくにのアリス』ポプラ社〈テレビ名作アニメ劇場〉4、1975.10.
高橋信也画、ポプラ社〈世界名作ファンタジー〉17、1986.1.
大野豊画、永岡書店〈名作アニメ絵本シリーズ〉25、1986.5.(→1990.)
(→この作品については私家本『Alice in Trash Basket』でも紹介しています)
高橋信也画、ポプラ社〈スーパー・アニメファンタジー〉19、1989.5.
大野豊画、ブティック社〈よい子とママのアニメ絵本 せかいめいさくシリーズ〉48、1991.7.(→1996.)
同シリーズ64は『かがみ』。全80巻。このシリーズは世界16カ国で出版された。
平田昭吾は「アニメ絵本」のための何らかの技術(おそらくイラストをセル画として描かせ、そのまま絵本化する技法)を考案し“スーパーアニメ創始者”と称して、1991年の段階で“実用新案出願中”だったが、果たしてどうなったのか?
世界の名作を、のきなみ“アニメ絵”の小型本にして普及させた第一人者だが、絵本の構成・文章のオリジナリティをめぐり永岡書店を相手どった裁判では全面的に敗訴(2000.)。
高橋真琴「ふしぎのくにのアリス」、《よいこ》小学館、1975.12.号 所収
表紙含め 5頁の絵物語。「DRINK ME」のびんで小さくなり、いもむしのアドバイス、きのこを食べて巨大化、トランプの行列、トランプに襲われて目覚める、という 5場面が描かれる。
高橋真琴米寿記念画集『Etoile(エトワール)高橋真琴のお姫さまとヒロインたち』(パイインターナショナル〔PIE International〕、2022.8.)に再録(情報提供 十一氏)。
吉田喜昭文『ふしぎのくにのアリス』集英社〈母と子のアニメ絵本〉4、1977.12.
(→この作品については私家本『Alice in Trash Basket』でも一部紹介しています)
ティビーエス・ブリタニカ〈ミニまんが 世界昔ばなし〉第46話、1978.5.
〈まんが世界昔ばなし〉114話「不思議の国のアリス」(1977.12.8.初放映)の最初の絵本化かと思われる(下記〈学研・アニメ世界名作文庫〉の項を参照)。
里吉しげみ文、宇野亜喜良画「ミュージカル童話 ふしぎの くにの アリス」、サンマーク出版〈すくすくレコードブック〉5(ゆたかな心を育てる)所収、1981.2.(→1981.7.)
山元清多 文、杉田豊 画「チュムとチュク」(『イソップ物語:田舎のねずみと都会のねずみ』より)併録。 →(詳細)
山谷泰子文、井上智画、ポプラ社〈アニメ・ファンタジー〉52、1982.9.
このシリーズにも平田昭吾が関わっている。イラストがやや劇画調で、ミス・マッチなおかしさがある。
陸奥A子文画、集英社〈こどものための世界の童話 ファンタジーメルヘン〉6、1983.6.
マンガ家が世界の名作を…という企画の場合、すでに売れない、あるいは才能の枯渇した「過去」の作家が起用されるイメージがあるが、この全10冊のシリーズは当時人気のあった中堅どころに「絵本」を描かせる試みに新鮮さがあり、結果から言っても力作がそろった
(もっとも陸奥と並んで“乙女チック路線”の双璧だった太刀掛秀子の代表作が'70年代後半に集中しているように、各作家にとって微妙な転換期だったとは言えるかも知れないが)。《セブンティーン》系の作家なども混じっていて、かなりヴァラエティがあり、現在からすると、むしろレディース・コミック系が多い印象か。
陸奥A子は杉浦範茂(はんも)
のファンだけあって、色彩にこだわりを見せた。全巻B5サイズカラーピンナップ付(絵本の版型はA4)。
『テレビ名作絵本 ふしぎの国のアリス』〈小学館のテレビ絵本シリーズ〉
以下、各巻副題。
1 ふしぎなうさぎベニー、1983.
2 かいぞくせんのたからもの、1983.
3 ワンダーランドのけっとう、1984.
4 にやにやねことふしぎなはな、1984.
西ドイツとの合作アニメ(日本アニメーション制作、1983.10.10.〜1984.3.26.放映。日本版は全26話)の絵本化。
のちに〈ちびまる子〉で有名になるTARAKOのアリス役(別段、特徴ある声で演じたわけでもないが)で知られるシリーズ。
キャラクターデザイン熊田勇。ヴィデオは全3巻のものが比較的普及していて、地域の小規模図書館等で たまに見かける。
他に毎日EVRシステム発売のVHS全10巻セット〈アニメ世界名作劇場〉の第4巻も、このTVアニメがソースと思われる。
Amazonインスタントビデオで、全26話を視聴できる(有料)。
辻真先 文、木村光雄 画、朝日ソノラマ〈世界名作ものがたり〉2、1983.10. 〔→「70年代リスト」へ〕
大谷美恵(作画『不思議の国のアリス』学研〈ハイコミック名作〉1、1985.4.
この本のように原作に沿って『不思議の国』のストーリーをそのままコマ・マンガにしたものは意外にない。
〈ハイコミック名作〉第 1回配本は『アリス』と岸田恋 『ロミオとジュリエット』、水乃琳 『カルメン』。第 2回配本は 高河ゆん 『若草物語』、岸田恋 『赤と黒』。
他に、まつざきあけみ 『赤毛のアン』等がある。『戦争と平和』上下巻も岸田恋で、全12巻中 4冊を学習マンガ的な仕事をそつなくこなす岸田が担当したことになるが、
大谷、高河のような同人作家を起用したことに このシリーズの時代的意義があった。
『若草物語』は高河のプロとして初の単行本で、おそらくこれのみが〈ガッケンムック〉→〈ピチコミックスPockeシリーズ〉という形で再刊されている。
大谷は秋田書店の月刊《ひとみ》で大谷美穂としてデビューし、大谷美恵名義の作品は それ以前の この作品のみであるようだ。
美穂名義のコミックスに『HELLO!アリス館』1・2(1989.)や子育てマンガがある。
立原えりか文
島田コージ画、講談社〈アニメ世界めいさく〉15、1986.11.
サンリオアニメスタッフ画、〈サンリオ名作アニメランド〉11、1987.11.
サンリオでは「ハローキティの不思議の国のアリス」(アリス=キティの声、林原めぐみ)が知られているが、これは全く別物。
高橋一恵構成、佐藤トシロー画、雄鶏社〈おんどりアニメ絵本館〉、1987.
比較的個性を抑えた、無難な内容だが、平田昭吾(1986.)、立原えりか(1987.)を参照しているようだ。
『ふしぎの国のアリス かぐやひめ』〈サンリオ名作アニメランドカセット絵本〉、1988.8.
おおくぼ由美文、中島順三 構成、〈角川版世界名作アニメ全集〉22、1988.9.
城野賢一・清子監修・振付『こどものミュージカル いばら姫 ふくろうのそめものやさん・ふしぎの国のアリス』ドレミ楽譜出版社、1988.10.→1991.10.
“学芸会・おゆうぎ会用”の楽譜集。城野夫妻は“全国こどものダンス研究会”の肩書きを持つ。城野賢一 作詩、松山祐士作曲。奥付の“編著者 城野賢一郎”は誤りだろう。
目次によれば、「いばら姫」(グリム童話)、「ふくろうのそめものやさん」(日本民話)のあと、
M-1 オープニング ‥‥‥‥‥‥‥‥‥うさぎ,アリス
M-2 4匹の歌‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ねずみ,おうむ,あひる,わし
M-3 うさぎの再登場 ‥‥‥‥‥‥‥‥うさぎ
M-4 3匹の歌‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥いもむし,ねこ,帽子屋
M-5 トランプの登場 ‥‥‥‥‥‥‥‥ 演 奏
M-6 トランプのさいばん‥‥‥‥‥‥‥トランプたち
M-7 女王の命令‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥帽子屋,トランプの女王
M-8 トランプなんかにまけないわ ‥‥‥トランプの女王,アリス
M-9 フィナーレ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 全 員
…で、巻末に「振付集」あり。
山口俊子文、ダックスインターナショナル編、学習研究社〈学研・アニメ世界名作文庫〉7、1988.12.
制作協力 童話舎、デザイン アートジャパン 村松幹三、構成 スタジオパフ、企画・編集 柿内宏文。
シリーズは『小公女セーラ』、『あしながおじさん』、『ロミオとジュリエット』、『家なき子』、『レ・ミゼラブル(ああ無情)』、『オズの魔法使い』、本書、『フランダースの犬』、『クオレ愛の学校』、『15少年漂流記』の全10巻。
〈小公女セーラ〉(1985.)はフジテレビの〈ハウス世界名作劇場〉、〈愛の学校 クオレ物語〉(1981.)は TBS-毎日放送系列と、ソースはまちまち。
本巻では“テレビで実際に放映された「まんが世界昔ばなし」のフィルムを使用”しているが、TVアニメ版(TBS系)と異なり、原作の流れに近いリライト。
タイトルもアニメ版は「不思議の…」だが、この本の表記は『ふしぎ』。
(アニメでは涙が海と化すシーンのすぐあとが公爵夫人の家、ティーパーティから庭園へは嵐で流され、そのあとイモムシが登場… というようにエピソードを自由に組み替えている。
一方で、魚の背中に乗って涙の海を脱する設定(学研版では原作どおりコーカス・レースに続く)や、“こうしゃく夫人”の「からしもおかしも、三つの文字。」といったセリフなど、アニメからリライトへ引き継がれた部分も かなりある。
〈まんが世界昔ばなし〉版は“ねむりねずみ”がヤマネでなく単に大型のネズミである等、奇妙な点もあるが、全体として絵のクオリティは他の日本産アニメに比べて高い)。
ヴォリューム的に絵本とは呼べないが(125頁)、イラストの比率は絵本並み。前半フルカラー、後半セミカラー。巻末、谷川澄雄(成蹊小学校教諭)“作品について”。
また、このアニメの絵本化としては他に国際情報社 編〈まんが世界昔ばなし〉51『不思議の国のアリス』(出版年未詳。表紙も含め38頁。アニメ版に沿った展開)などがある。
『ふしぎの国のアリス あいうえおアニメ』笠倉出版社、1989.1.
桑原茂夫構成 『不思議の国のアリス マッド・ティー・パーティ』河出書房新社〈河出サウンド文庫〉5、1989.7.
企画制作 東京クリエイション、ジャケット・デザイン 渋川育由。内容はカセット 1巻 (A/B面合わせて40分) に英文テキストの冊子(訳文無し。タイトルは“不思議の国のアリス 〈マッド・パーティ篇〉”)を付す。
《別冊現代詩手帖》『ルイス・キャロル』(1972.)などを手掛けた桑原がシナリオを担当。冊子には桑原の解説「とりわけホラーファンタジックなシーンがマッド・ティーパーティだ。」と木村重一「●演出ノート」も収録している。
『不思議の国』の冒頭部と 7章および巻頭詩(献詩)を、音楽と日本語解説を交えクイーンズイングリッシュで朗読。
声の出演=アラン・ブース(3月ウサギ・英文献詩朗読)、ティム・ハリス(ハッター)、スチュワート・アトキン(ネムリネズミ)、ドリン・シモンズ(英文朗読)、早川理子(アリス)、ジョン・カビラ(川平慈温。日本語語り)。
いがらしゆみこ画 「世界名作 ふしぎの国のアリス」、《小学一年生》小学館、1989.9.(45巻6号)所収
『キャンディ・キャンディ』(1975-79.)で知られるマンガ家による絵物語。扉を含め 5頁。うさぎ穴への落下シーンが、勢いよく逆落としなのが可笑しい。「なみだのいけ」に浮かんだあと、すぐ「きのこ」の場面が 1コマあり、次の頁では すぐまた「さいばん」。トランプたちは人面でなく 4種のスートが顔になっている。(資料提供 木下信一氏)
木下牧子作曲『不思議の国のアリス こどものためのピアノ曲集』河合楽器製作所出版事業部〔カワイ出版〕、1993.4.
モーツアルト劇場主催、木下牧子作曲(台本にも参加)の創作オペラ「不思議の国のアリス」は、2003年11月初演、2005年9月28、29日に改訂版初演。
「ドラマCD : 不思議の国のアリス」1996.3.
アリス役は、かないみか。以下、曲目リスト。「海亀フー」は柳瀬尚紀訳による。
1.アリス,兎穴を下って
2.芋虫の忠告と公爵夫人の豚ん坊?
3.チェシャ猫のにたにたにゃろりん
4.はちゃめちゃお茶会
5.女王さまと首切り役人
6.グリフォン,海亀フーの身の上話
7.パイ裁判,盗んだのは誰なの?
8.アリスの証言
9.おまけ
伊藤海彦文、伊藤美貴画『世界むかしばなし ふしぎのくにのアリス』〈NHKソフトウェアかみしばい〉5、1996.
水星社(楽譜)、1998.12.
1 金いろの午後(合唱)
2 チクタク遅刻だ(独唱と合唱)
3 とんでもトンネル(合唱)
4 小びとは南でも怖いのだ(合唱)
5 変身学校(独唱と合唱)
6 みつけたぞキノコ(二重唱と合唱)
7 勇気だしてオー(独唱と合唱)
8 トンチキ子守歌(独唱と合唱)
9 にやネコさん(独唱と合唱)
10 コンチキコンピューター(合唱)
11 くるくるパーティー(三重唱と合唱)
12 花の世界(合唱)
13 ドードーめぐりの歌(独唱、三重唱と合唱)
14 犯人は誰だぁ(独唱と合唱)
15 さあ出かけよう(合唱)
「くるくるパーティー」は宗方あゆむ訳(1992.)、「ドードーめぐり」は矢川澄子訳によるものと考えられる。
照沼まりえ構成・文、さくましげ子画、永岡書店〈世界名作アニメ絵本〉25、1999.(→2000.)
うすいよしこ画『かわいい名作ぬりえ・ふしぎの国のアリス』永岡書店、2000.5.
CLAMP原作『アニメブックス カードキャプターさくら さくらカード編(3)』講談社〈なかよしメディアブックス〉64、2002.2.
NHKアニメ〈CCさくら〉第55話「さくらと不思議の国のさくら」(1999.11.2.初放映)が収録されたフィルム・ブック。
木之本桜 役の声優・丹下桜は子どもの頃からのアリス・ファンだった。
とみはた まりえ画 『絵本 ふしぎの国のアリス』株式会社元林、c2005.
題に「絵本」とついているのは裏表紙の奥付に当たる部分のみ。100円ショップで販売される小型絵本。アニメ絵というわけでもないが、いわゆるアニメ絵本と同じ版型。
なお、あまり関係ないが the ダイソー(大創産業)では300円のDVD〈語学を学ぶ世界童話シリーズ〉22「ふしぎの国のアリス」(2004.)も販売。ほとんど動かない短編アニメで絵的なクオリティは低いが、日本語・英語以外に中国語・韓国語のアリスも手軽に聞ける点が貴重。
『不思議の国のアリス〜塗り絵〜』サニー出版、2006.4.
ぽっぷ画、はやのみちよ〔早野美智代〕文『POP WORLD ふしぎの国のアリス』ポプラ社、2006.4.
通常の版型の絵本(22×27cm)。内容は原典の 1、2章(ドードーは登場せず)、5章(“イモムシ”)、6章末(“チェシャネコ”の登場)〜8章(“クロケー”)、12章。
『萌える英単語』のヒットで注目されたイラストレイターを起用。いわゆるアニメ絵本に比べれば質が高いが、アリス以外のキャラクターにはあまり魅力がない (片眼鏡のイモムシにはオリジナリティあり)。
“編集協力”の みっとめるへん社は〈音のでる絵本〉で知られる。続編 に『POP WONDERLAND 赤ずきん』(2006.)等がある。
木下さくら画『ALICE IN WONDERLAND Picture Book 不思議の国のアリス』〈幻冬舎コミックス〉、2006.12.
→『ALICE IN WONDERLAND Picture Book 不思議の国のアリス 普及版』〈幻冬舎コミックス〉、2007.9.
判型がワイド(AB)判で絵本のような外見だが、オールカラーのコミック。描き下ろし、全62頁。全体を九章に分け、アリスは各章ごとに服装・髪型だけでなく、瞳の色まで異なる。
『不思議の国』を そのままコミック化したものは、1985年の大谷美恵版以降、初めて。
“初回限定特典”として別冊の設定資料集を付す。普及版もオールカラー(A5)、79頁で巻末に設定資料集を含む(初回特典とは若干、構成が異なる)。
あぼしまこ画、たかはた喬文〔“補訳・脚本”〕、ドラマCD 「ふしぎの国のアリス」、《ティアラ!》 コアマガジン〈コアムックシリーズ〉323、2007.8. 綴じ込み付録
企画 上崎洋一。アニメのムック本の付録(実質的にはメイン・コンテンツ) として、「アリス」 「人魚姫」 「シンデレラ」 のドラマCD が封入されている形。
〈ティアラ名作劇場〉 と名づけられ、アリスに関しては “底本” を 菊池寛、芥川龍之介共訳 とするあたり 冗談でしかなく、出版物としてはキワモノだが、内容的 にはパロディでなく 若年層向けのリライト。
文体は、いわゆるライトノヴェル調。以下、声優陣。アリス=能登麻美子、白ウサギ=志村由美、チェシャ猫=笹島かほる、三月ウサギ=儀武(ぎぶ)ゆう子、ヤマネ=山川琴美、ナレーション=井上喜久子。
たむら純子(画 『名著をマンガで! 不思議の国のアリス』学研パブリッシング(学研マーケティング発売)〈学研コミック文庫〉006、2010.3.
→kindle版、学研パブリッシング/秋水社、2014.1.
文庫版で、名作をマンガで読むという流行に乗った出版物。編集協力 秋水社。
12章の構成で、4章末の子犬の場面や5章の Father William の詩、10章のロブスター・ヒョウ・フクロウの詩などが略されているほかは、原作に忠実にストーリーが展開する。
言葉遊びはネズミの“おはなし/尾は無し”と9章末の“時間割”以外フォローされておらず、全体に粗筋を読むような味気なさがある。原典どおりのフレーズも多く勝手なアレンジは少ないが、オリジナリティも少ない。
kindle版表紙のカラー・イラストは文庫版には無い。
『Alice in wonderland/コミックアンソロジー極 不思議の国のアリス』スクウェア・エニックス〈ガンガンコミックスアンソロジー〉、2012.11.
パロディもしくはアリスをモチーフにした創作のアンソロジーで、本来このリストに載せるべき作品ではないが、タイトルが『不思議の国のアリス』なので紹介しておく。奥付は“極/不思議の国のアリス”。
カヴァーイラスト 望月淳。巻頭イラスト 米山シヲ、桑原草太、鈴木次郎、赤井ヒガサ。
内容/丸美甘「中学二年生アリス」、ヨシノサツキ「キャロルお父様(ファーザーキャロル)の優雅な一日」、野原ゆた「不思議の国の斉藤さん」、田中ひかる「WONDER LAND」、966(クロロ)「どうも、トランプ兵です。」、西松碧也「カオスのお茶会のアリス」、144(イチヨシ)「ラビらぶっ」、万丈梓「アリス イン ワールドエンド」、たかたゆうじ「不思議の国のそれ。〜バカと勇者は使い様の巻〜」。
月並みな作品集。
小鳩まり『〈BIRZ(バーズ)COMICS SPECIAL〉 なめこ文學全集 ザ・ワールド なめこでわかる世界名作文学 不思議の国のアリス編』〈幻冬舎コミックス〉、2015.7.
タイトルは本体・カヴァー背によった(奥付などは“不思議の国のアリス編 なめこでわかる世界名作文学”の順)。ゲーム「おさわり探偵 なめこ栽培キット」のキャラクターである“なめこ”達で文学作品の筋を紹介するシリーズの 1冊。
アリスは“リボンなめこ”、白ウサギは“白ウサギなめこ”、チェシャ・キャットは“フンギビースト”、帽子屋は“ドリームなめこ”、ハートの女王様は“ヒメなめこ”と、それぞれに似合ったキャラクターが割り振られた。
青虫のくだりでは、なめこがキノコを食べるというシュールな展開を見せる。鳩や公爵夫人は登場しないが、概ね原作に沿ったストーリー。庭師が騎士だったり(“スペードなめこ”)、グリフォンが東洋の龍を思わせる姿だったりする(“滑龍”)のには違和を感じる。ペットのダイナは普通の猫のような“ねこなめこ”だからいいのだが、ハリネズミもフラミンゴも、なめこなのは苦しい。
「不思議の国」以下、カフカ「変身」、グリム兄弟「ブレーメンの音楽隊」、スティーヴンソン「ジキル博士とハイド氏」、ワイルド「ナイチンゲールと赤い薔薇」、セルバンテス「ドン・キホーテ」のなめこ版を収録。
グッド・ワイヴス・アンド・ウォリアーズ〔Good Wives and Warriors〕画、小林美幸訳 『物語のある美しい塗り絵 不思議の国のアリス 色どりのワンダーランド』 河出書房新社〈大人の塗り絵シリーズ〉、2015.11.
原題 ESCAPE TO WONDERLAND A Colouring-book Adventure(2015.)。グッド・ワイヴス・アンド・ウォリアーズはベッキー・ボルトンとルイーズ・チャペルのコンビ。デザイン 清水肇(prigraphics)。〈物語のある美しい塗り絵〉はシリーズ名(同シリーズに『クリスマス・キャロル』など)。
“大人の塗り絵”本ブームに乗って出版された。テニエルの絵をベースにしているが相当にオリジナリティのある線描画。訳文も個性的で、訳者はアリスに思い入れが強いようだ。例えば“Curiouser and curiouser!”は「びっくりどうてん。信じらりるれないっ!」。
『不思議の国のぬり絵ブック』パイインターナショナル、2015.12.
原典から抜粋したテニエル版だが、絵が非常に鮮明(後半は『鏡の国』)。巻末に『不思議』『鏡』のあらすじと簡単な解説あり(メインの頁には英文の引用のみ)。
Amily Shen〔アミリー・シェン〕 『奇幻夢境 不思議の国のぬり絵BOOK』主婦の友社、2016.1.
台湾のイラストレイターによる大人の塗り絵本。大枠は『不思議の国』に従うが、“トランプ人”が誰かから逃げていたり、きのこの森に茶屋があったり(三月うさぎと帽子屋の“ティーパーティー”は別の場所)と、オリジナルのストーリーを展開。巻末にイラスト・塗り絵指南あり。
続編 『奇幻夢境2 不思議の旅のぬり絵BOOK』(2016.8.)にもアリス・キャラが登場するが完全にオリジナルのストーリー。その帯によれば“世界17ヵ国で45万部売れた”。
樋田まほ訳 『不思議の国のアリス原書ぬり絵 オリジナルイラストで名場面をたどる』エクスナレッジ、2016.3.
装丁・本文デザイン 山城由、DTP協力 小林祐司、翻訳協力 株式会社トランネット。テニエルの絵を素材に、さまざまな模様を用いてデザイン化。原典から抜き出した英文には色の塗れる白ヌキ文字もあり。
鈴木阿以(画 『ぬり絵ブック 不思議の国のアリス ALICE IN WONDERLAND』宝島社、2016.4.
鈴木はロンドンのセントラル・セント・マーティンズのジュエリーデザイン科を卒業したイラストレイター、ジュエリーデザイナー。デザイン 大久保有彩(store inc.)。『不思議の国』から40場面をイラスト化。絵にはタイトルのみで、絵本のような文章は無し。
イ・ジェウン〔LEE. jaeeun〕画、キム・ヒョンジュ文、安藤能子訳 〈わたしの塗り絵BOOK 世界の物語シリーズ〉『Alice in Wonderland 不思議の国のアリス』日本ヴォーグ社、2016.5.
韓国の塗り絵本の翻訳。ブックデザイン 加藤美貴子。同シリーズに『赤毛のアン』『オズの魔法使い』などがある。
渡邉良重(絵、安藤隆文 『Only yours Little Red Riding Hood The Nutcracker Alice In Wonderland ぬりえ の 赤ずきん、くるみ割り人形、不思議の国のアリス』リトルモア、2016.5.
日英バイリンガル版。英訳 島卓也、ジェニー。白ヌキになった文字まで塗れる。
手塚ユミコ画 『おしゃれな塗り絵BOOK アリスの不思議かわいい物語』ソシム、2016.8.
カバーデザイン 齋藤州一(sososo graphics)、本文DTP you、編集 平松裕子。『不思議』と『鏡』から30場面をイラスト化(中にはアリスとは関係無い絵も混じっている)。巻末に切り取って使えるメッセージカード 4枚付き。
原明日美漫画、桑原美保文 「ふしぎの国のアリス」、『おとぎの国のNico』小学館、2017.7. 所収
勝田悠紀著、はしゃ画 『『不思議の国のアリス』で深める英文解釈12講 「ナンセンスの王国」に英文法で迫る』 NHK出版〈音声DL BOOK〉、2023.2.
ドリヤス工場 「不思議の国のアリス」、『評判すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む。』リイド社〈トーチコミックス〉2023.9. 所収
水木しげるの画風で描かれた10頁のあらすじ漫画に、1頁の「ルイス・キャロル」の Profile。言葉遊びは完全に省略され、文字通りあらすじのみ。芋虫の絵などに少し特徴がある。「代用ウミガメ」という語は(八波直則訳でなく)Wikipedia に拠ったものだろう。ラストの裁判シーンには故意か不注意か「法廷は でたらめなもので 証人が次々と 女王の命令で 追い出されるので アリスは抗議します」と原典にない描写あり。
本書には他に23作の小説が漫画化されている。『有名すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む。』(2015.)『定番すぎる……』(2016.)『必修すぎる……』(2017.)に続く、古典文学(童話や「マザー・グース」も含む)に水木漫画風のダイジェストで親しむシリーズの 4冊目。