井上秀子訳注『不思議国のアリス/Alice's Adventures in Wonderland』〈開文社出版英米文学訳註叢書〉49、1954.1.
→井上秀子 編註『不思議国のアリス/Alice's Adventures in Wonderland』〈開文社出版英文名著選集〉、1956.9.
→井上秀子(編)注『不思議国のアリス/ALICE'S ADVENTURES IN WONDERLAND』〈開文社出版英文選書〉110、2001.4.
井上秀子は同名異人が多く、婦人参政権運動で知られる日本女子大学校長とは別人だろうが不詳。東京女子大学の《英米文学評論》2巻2号(1955.1.)に「『アリス』に見る内面的苦悩に就て」を書いたのと同一人物〔かつてこの欄に2巻1号と記載していたが『英米文学研究文献要覧(1945-1964)』日外アソシエーツ(1994.)の誤りを引き継いだもの〕。
内面というテーマそのものに時代を感じるが、ここでの“苦悩”とは作者キャロルの“人生批判”が作中にうかがわれるというような意味で、
William Empsonの論などを紹介した早い例のようだ。
開文社へ送った質問状の回答によると“井上秀子先生はすでに鬼籍に入られて久しく、先生の履歴を知るものは現在社におりません。”とのこと。
対訳の〈訳註叢書〉は絶版だが、訳文のない“編注”版は入手可能(本体価格1400円)。
装幀 沢田重隆。 アリスの各国語翻訳を考えるさいの基本図書、ウォーレン・ウィーヴァー〔Warren Weaver〕著 ALICE in many tongues(1964.)の中絵に引用されたカットは、
岩井泰三の描いたアリスとしてはベストに近いもの(岩井の絵は例えばポプラ社の旧〈少年探偵団〉シリーズで見ることができるが、全体にバタくさい →(詳細))。