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それに、子どもを甘い、やさしい気もちにさせるのは、ねじりぼうアメや何かのせいよ。みんな、そこんとこを、わかっててさえ、くれたらな    。そしたら、あんなにお菓子を、かくそうとしないのにね……」
( and barley-sugar and such things that make children sweet-tempered. I only wish people knew that : then they wouldn't be so stingy about it,you know----”)

barley-sugar バーレイシュガー(バーリィシュガー)は、飴の一種で、かつては barley 「大麦」の煮汁で蔗糖(サトウキビから採った砂糖)を煮つめて作った。 伝統的に棒をねじった形をしているが、ふつうのドロップ型のものもある。

レシピは、ジョン・フィッシャー『アリスの国の不思議なお料理』にも載っている (開高道子は短い文章の中でバーレイシュガーについて、“お人好しあめん棒”、“大麦糖”、“ねじりん棒”と三様に表現している)。
ねじり棒飴、という訳は、今のところ拙訳のみ (この訳、使用したいという方は、ご自由に)。
Mrs.Corry P.L.トラヴァース〔Travers〕『Mary Poppins』(1934.)のコリーおばさん〔Mrs.Corry〕のエピソード(8章)にも barley-sugar は登場する。 手品ではなく魔法だろう。
『Mary Poppins in the Kitchen』(1975. 邦訳『メアリー・ポピンズのお料理教室』文化出版局、1977. 、『台所のメアリー・ポピンズ』アノニマ・スタジオ、2014.)にも、同様のエピソードがある。 イラスト(右図)は同書からメアリー・シェパード〔Mary Shepard〕の描くコリーおばさんとジェイン、マイケル。もともとモノクロの絵だが、2006年の米国版で色づけされた。
岩崎民平訳 “子供が気立てがよくなるのはお砂糖やら何かそんなもののせいだわ。” 注釈書では“鳩麦を砂糖で固めてひねった菓子”とする。
多田幸吉訳 “子供の気立てがやさしくなるのは、鳩麦菓子やそんなものなんだわ。”
芹生 一訳 “それから、と、子どもの気だてがよくなるのはキャンデーやなんかのせい。”
石川澄子訳 “そして、子供をいい子にするのはボンボンで、キャッキャッと喜ばせるのはキャンデーの働きだわ。”
高橋康也・迪訳 “それから子どもを甘くやさしい気だてにするのは甘くておいしいキャンディよ。”
矢川澄子訳 “ええと、キャンデーみたいなものなら子供たちの心だってとろけちゃう。”
北村太郎訳 “それにあめは子どもたちを心のやさしいあめえ性質にしてくれる。”
高山 宏訳 “おかしな子にしたけりゃ、飴をあげる。”
脇 明子訳 “子どもが かしこくなるのは、大麦糖とかそういったお菓子のせいね。”
久美里美訳 “そして麦芽糖のお菓子は子どもをすてきな気分にしてくれる。”

拙訳は後半を、多くの既訳と同様、「お菓子を、けちけちしたりしないのにね」と訳していたが、意味はよく通じるものの、“お菓子を、けちけちする”というのも少し変な言い回しに思える。 次に挙げる訳例のように微妙に言い方を変えるだけでも、不自然さをまぬがれることはできるが、ここは stingy を「出し惜しみする」くらいの意味にとって改訳した。

高橋康也・迪訳 “おとなって、このことがぜんぜんわかっていないのよ。わかっていれば、あんなにけちけちしないはずよ」”
村上由佳訳 “大人がそれをちゃんとわかってたらなあ。そしたらあんなにお菓子をケチったりしないでしょうに  」”
山形浩生訳 “みんながこれをわかってくれればいいのに。そうしたら甘いもの食べすぎてもあんなに怒らないだろうし  」”

people も、漠然と「世間の人たち」のような意味にもとれるが、「家人、家族(の人たち)」くらいの意味に限定したほうが、いいかも知れない。

(最終更新 2015年 3月 2日)