| Home|

「そのひま、なかったんだ」とグリフォン  。「だが、古典の先生のとこには、かよったぜ。  こむずかしいったらなかった、そいつ、がちがちの じいさんガニで」
「ぼくはあの先生には、つかなかった」ウミガメ・フーミが、ため息をつく。
(“Hadn't time,”said the Gryphon : “I went to the Classical master,though. He was an old crab,he was.”
“I never went to him,”the Mock Turtle said with a sigh. )

He was an old crab,he was. は“断定を強調する,主語と(助)動詞をくり返す構文”(『アリスの英語』 137-8頁)で、 俗っぽい言い回し。
続くグリフォンのセリフ、“So he did,so he did,” 「そうそう、そうだったよ」も同様。


3章末のカニの親子が、怒りやすい性格を体現していることは、にも書いた (話し言葉では、名詞の crab だけで「気難かし屋、いつも不機嫌な人」の意味に使われる)。
ここに登場するカニにも、同じく crabbed の「怒りっぽい、気難しい、意地の悪い」という含みがあると捉え(岩崎民平や高山宏、脇明子が この解釈)、拙訳も それっぽく訳してみたのだが、 むしろ、ここには crabbed の別の意味、「(書物などが)読みづらい、解りにくい」ことが含意されていると見たほうがよさそうだ。
つまり、古典の先生が old crab なのは、ラテン語やギリシャ語なんて、古くて読めたものじゃないと、暗に臭わせている。