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とびこんだウサギの穴
(Down th Rabbit-Hole)

長谷川康訳 兎の穴を逆落し(1909.)
丸山英観訳 兎の穴へ(1910.)
岩崎民平訳 兎の穴へ
楠山正雄訳 ウサギ穴におちる(1948.)
高山 宏 訳 兎穴に落ちる(1994.)
八波直則訳 うさぎあなを下へ(1963.)
飯島淳秀訳 うさぎのあなに落ちて(1967.)
足沢良子訳 うさぎ穴へ落ちる
高山 宏 訳 うさぎ穴を落ちる(2015.)
生野幸吉訳 うさぎ穴を落ちてゆくと
脇 明子 訳 ウサギ穴に落っこちて
楠本君恵訳 ウサギの穴に落ちる(2006.)
楠本君恵訳 ウサギ穴に(2013.)

本多顕彰訳 うさぎあなをおりていく(1961.)
石川澄子訳 兎穴を降りる
矢川澄子訳 ウサギ穴をおりると

1章章題の既訳で特徴があるのは高橋康也・迪 夫妻のもので“ウサギ穴にドスン”と訳した(1985.)。
おそらく、ドスン、で down と語呂を合わせたのだろう(高橋訳の場合、アリスが穴の底で尻もちをついたとき“ドスン! ドスン!”と音がするので、この訳で整合性が取れるわけだ)。
小学中級程度の読者を意識した蕗沢忠枝訳(1982,2005.)は“ウサギの穴にすとーん”で、高橋訳は これにヒントを得て改良したものと思われる。
楠悦郎訳(1987.)“ウサギ穴にストーン”も、蕗沢・高橋訳に倣ったのだろう。


拙訳の場合、やや原文の意味から離れてしまうが、アリスの能動性を強調したものになっている。

また、『新「アリス」訳解』での方針のひとつは、英文をできる限り前から後ろへ「順送り」に訳し、意味の立ち現れる順序を原典に近づけることだ。
「順送りの訳」については例えば、シェークスピアの翻訳等で知られる安西徹雄の『英文翻訳術』〈ちくま学芸文庫〉を参照されたい。
追記。この翻訳方針は拙訳では不徹底だが、島本薫訳 『『不思議の国のアリス』を英語で学ぶ』(国際語学社、2014.)は かなり徹底して「順送り」に訳している (1章章題の訳は“うさぎの穴におっこちて……”だが)。

(最終更新 2015年 5月 3日)