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つっこんだのは、柴と枯れ葉の山。落っこちるのも、ここまでだ。
(down she came upon a heap of sticks and dry leaves,and the fall was over.)

Ronald Reichertz は 『The Making of the Alice Books 』 という本の中で、 ここは、fall was over 「秋が終わった」 ために、sticks and dry leaves に突入したのだと、面白い説を唱えている。
『地下の国のアリス』の段階では sticks and shavings 「小枝と かんなクズ」 だったので、キャロルは 『不思議の国』執筆時に、このジョークを思いついたのだろうと Reichertz は考えた。
確かに、fall が秋を意味するようになったのも 木の葉の落ちるイメージからだろうし、全くありえない説とも言えないが、もちろん証拠はない。
ごく普通に捉えれば、ほこりまみれになりそうな、あるいは人工的な設定を想像させる木クズは、このシチュエーションにふさわしくないとキャロルが考えて改変したのだと思われる。
地上世界がデイジーの咲く春であるとき、オーストラリアやニュージーランドなど南半球は秋である、とも Reichertz は指摘するが、それなら秋本番のはずで、「秋が終わった」 というのも妙だ。

それより私には、キャロルが自作の中に季節感を それほど持ちこむタイプとは、どうも思えない。
「秋が終わった」 なら “不思議の国” は冬のはずで、2章ではアリスを寒中水泳させたことになる(これでは風邪を引くどころではない)し、 8章の庭園のバラにしても、冬に咲く花もないではなかろうが、だいたい初夏 6月か秋 9月がイギリスでは見ごろで、南半球説等を考え合わせても季節的な一貫性を求めるのは、どだい無理である。
作中では実在の Alice の誕生日、5月 4日が設定されており、地上は春、地下の “不思議の国” は秋、というのが一応 ありうる解釈だが、そもそもが夢の中の世界であり、むしろ季節のない国と考えたほうがよさそうだ。

後注。キャロルの植物への興味について記した部分も参照されるとよい。