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咲いてるバラは白かったけど、庭師が3人がかりで、せっせと赤くぬっている。
(the roses growing on it were white,but there were three gardeners at it,busily painting them red. )

gardeners


spade には(すき)、踏みぐわの意味があり、まさにトランプのマークもそういう
形なので、庭師はスペードにふさわしい。

あとの場面、トランプたちの行進に スペードが登場しないのも、すでに庭
師として登場しているためであるのは言うまでもないだろう。

もちろんテニエルはじめ、ほとんどの画家は庭師をスペードとして描いて
いるが、ガードナーが 『新注アリス』 で紹介したピーター・ニューエルは、
間違ってハートとして描いている(と、『決定版 注釈アリス』 に補記して
いる)。
ちなみにディズニー・アニメの中で、バラを塗っているカードたちはクロー
バーだ。


「庭師」 というのは、キャロルには少年期から、なじみのある存在だった
らしい。
キャロルの父(名前はキャロルの本名と同じで Charles Dodgson )が、
ダーズベリー〔Daresbury〕から クロフツへ栄転したさい、牧師館の前任
者ダルトン師が植物学者であったため専任の庭師を雇っていたのを、そ
のまま引き継いだという。
キャロルの母は園芸好きであり、姉のフランシスも植物学に長けていた。

もっとも 『鏡の国』 2章の花園などを見る限り、キャロルが花々や庭師に
好感を持っていたかどうか、疑問である。

イザ・ボウマン〔Isa Bowman〕は、『Lewis Carroll as I Knew Him』 の中で、キャロルは花に興味を持たなかったと証言する。

続けてイザは、Once,and once only,I remember him to have taken an interest in a flower,and that was because of the folk-lore that was attached to it,and not because of the beauty of the flower itself  「いっぺん、たったいっぺんだけ、彼が花に興味を持ったことを覚えていますが、それも その花にまつわる民間伝承のためで、花そのものの美しさのせいではなかったのです」 と語り、キツネノテブクロ のエピソードを紹介している。
もっとも、まるで植物に興味が無かった、というわけではない。 《Mischmasch》 5号(2001.)所収の論文、西村杏子 「ルイス・キャロルの作品に現れる「自然」」 は、キャロルと植物との関わりを次のように まとめている。 要するに、キャロルの興味は “博物学”的な、理智の勝ったもので、素朴に花の美しさを観賞するというような態度は取らなかったわけだ。

だが、西村光雄「ルイス・キャロルの自然誌」によれば、手紙や日記も含めると、“キャロルが生涯に書きとめた動物名は三四〇以上(種など分類群の数としては二七〇以上)、 植物名は一九〇以上(分類群の数としては一五〇以上)”にのぼるという〔安井泉編著『ルイス・キャロル ハンドブック アリスの不思議な世界』七つ森書館、2013.、148頁〕。
by Harry Furniss

テニエル描く三月ウサギの頭には、狂気のシンボルとして ワラしべが巻いてあるが、『シルヴィーとブルーノ』 5章のハリー・ファーニス描く “庭師” は、頭やヒゲや靴などから ワラしべが飛び出している。

(最終更新 2013年7月21日)