もちろんテニエルはじめ、ほとんどの画家は庭師をスペードとして描いて もっとも 『鏡の国』 2章の花園などを見る限り、キャロルが花々や庭師に
spade には鋤、踏みぐわの意味があり、まさにトランプのマークもそういう
形なので、庭師はスペードにふさわしい。
あとの場面、トランプたちの行進に スペードが登場しないのも、すでに庭
師として登場しているためであるのは言うまでもないだろう。
いるが、ガードナーが 『新注アリス』 で紹介したピーター・ニューエルは、
間違ってハートとして描いている(と、『決定版 注釈アリス』 に補記して
いる)。
ちなみにディズニー・アニメの中で、バラを塗っているカードたちはクロー
バーだ。
「庭師」 というのは、キャロルには少年期から、なじみのある存在だった
らしい。
キャロルの父(名前はキャロルの本名と同じで Charles Dodgson )が、
ダーズベリー〔Daresbury〕から クロフツへ栄転したさい、牧師館の前任
者ダルトン師が植物学者であったため専任の庭師を雇っていたのを、そ
のまま引き継いだという。
キャロルの母は園芸好きであり、姉のフランシスも植物学に長けていた。
好感を持っていたかどうか、疑問である。
イザ・ボウマン〔Isa Bowman〕は、『Lewis Carroll as I Knew Him』 の中で、キャロルは花に興味を持たなかったと証言する。
テニエル描く三月ウサギの頭には、狂気のシンボルとして ワラしべが巻いてあるが、『シルヴィーとブルーノ』 5章のハリー・ファーニス描く “庭師” は、頭やヒゲや靴などから ワラしべが飛び出している。
(最終更新 2013年7月21日)