アリスは、ほとほと、うんざりして来た
(ALICE was beginning to get very tired )
ガードナーは 『決定版 注釈アリス』 〔Martin Gardner “ The Annotated Alice THE DEFINITIVE EDITION” W.W.Norton&Company Inc. 2000,〈PENGUIN BOOKS〉2001. 未邦訳*〕で、物語を Alice という語からスタートしたのはキャロルの意思であるという見方に同意している。
マクミラン社の初版で確認すると、第 1章冒頭の ALICE は、2章以降と異なりインデント(冒頭空白) を入れない上に、文字サイズも他より、ひと回り大きい。
以下、当サイトの訳注では、ガードナーの 『決定版』 で新たに付加された注、すなわち旧版の 『詳注アリス』(1960. 改訂版1970.)および 『新注アリス 〔More Annotated Alice〕』(1990.)には書かれていない部分について、網羅して解説する (ただし、著作権への配慮は必要なので全訳というわけではない)。
なお、ガードナーは2010年5月22日に死去した。
* 追記。2000年版および2001年版は訳されなかったが、『不思議の国』刊行150周年記念出版のマーク・バースタイン〔Mark Burstein〕補訂 “150TH ANNIVERSARY DELUXE EDITION” W.W.Norton&Company Inc. 2015. は高山宏訳 『詳注アリス 完全決定版』(亜紀書房、2019.)として全訳された。
ガードナー注の最終形態と目されるもので、アリスを読解・研究する者は まず参照すべき本である。
(最終更新 2020年 1月26日)
very tired は 「退屈」という訳で親しんでいる読者がほとんどだろう。
この名訳は楠山正雄以後、一般化した。
一見強い個性を主張しない楠山の訳は、むしろそれゆえに後代の訳に影響を与えている。
著者検印に 「かたりべのをぢ」の印形を用い、多くの童話全集を編纂した楠山は、
一般にアンデルセン童話の紹介者として知られるが、世界の説話文学に対する目配りの広さをも評価すべきだろう。
楠山の仕事に関心のある方には、まず楠山三香男 編 『楠山正雄の戦中・戦後日記 ―辞典編集・演劇・童話の仕事を誠実に追う―』(冨山房、2002.) を読まれることをお奨めする。
なお、最初に“退屈”の訳を用いたのは大溝惟一の訳注書(1911.) と思われる。