グリフォンは、前とほとんど同じせりふで答えた。「みんな、あいつの空想なんだ。
つまり、悲しいことなんざ、なんにも、ないのさ。ほら、ついて来いよ!」 〔中略〕
「こちらの、じょうちゃんがだな」とグリフォン。「おまえの身のうえを聞きたいんだとさ」
( And the Gryphon answered,very nearly in the same words as before,“It's all his fancy,that: he hasn't got no sorrow,you know. Come on!” 〔……〕
“This here young lady,”said the Gryphon,“she wants for to know your history,she do.” )
このくだり、神獣であるはずのグリフォンの教養のなさが、いかんなく発揮されている。
he hasn't got no sorrow は、二重否定が肯定の意味にならない (正しくは any sorrow とすべきところ)。
This young lady で充分のところへ、here を はさみこむ。
wants for to know と、to 不定詞の前に for を置く語法。
いずれも、俗な言い回しだ。
追加陳述の she do は、もちろん正確には she does でなければならないが、こうした言葉遣いは、教育のない階層に、よく見られる。
キャロル自身の描いた グリフォンのイラストは、翼も無く、みすぼらしい。