翻訳児童文学史、小説 「蒲団」 研究の 新たな 基礎文献
『 「アリス物語」 「黒姫物語」と その周辺 』
本邦初の 『不思議の国』 紹介となった 『アリス物語』 だが、物語は原典を離れ、
無国籍ファンタジーに…。C.キングズリー 『水の子』 の翻案と言える『黒姫物語』
ほか初期作品を読み解く。田山花袋(の女弟子・岡田美知代と永代(静雄との恋愛
の行方は? その実生活における波乱は、初期少女小説の中に刻まれている。
目 次
解題 永代静雄の洋行
筆名・須磨子について
「アリス物語」研究史
一、 《少女の友》 初号 の アリス
川端龍子 と 〈国民新聞〉 人脈
内ヶ崎作三郎 と ラフカディオ・ハーン
〈東京毎日新聞〉*入社 と 早稲田人脈
丸山英観 と 〈万朝報〉 の人脈
二、 『アリス物語』 と キリスト教倫理
西内天行 と 岡田美知代の 「貞操」 観
関西学院 夏期学校 の 内ヶ崎作三郎
同志社神学生問題 と 花袋の 「蒲団」
三、 絵雑誌 《幼年の友》 の 「フシギナ クニ」
『まりちやんの夢の国旅行 ふしぎなお庭』 との関係
四、 『アリス物語』 の後代への影響
鈴木三重吉 「地中の世界」、倉橋惣三監修 「アリス物語」、
楠山正雄 『不思議の国』 と 芥川・菊池 『アリス物語』
五、 『黒姫物語』 と 『水の子』
田口櫻村の 映画ノヴェライズと 三芳屋書店
新渡戸稲造 と 岡田實麿
内ヶ崎作三郎 の キングズリー紹介
永代静雄 と 白石實三
六、「幸福の秘密」、「新たからさがし」の頃
今井邦子 と 水野仙子
略年譜 参考文献
* 永代静雄の最初の本格的な就職先は 〈東京毎夕新聞〉 でなく 〈東京毎日新聞〉 である。
主な活躍の舞台が 〈毎夕〉 であったことは確かだが、この点 は基礎文献の 『『蒲団』を めぐる
書簡集』 (1993.) ほか、Web上の記事等 に 間違っているものもあるので、特に指摘しておく。
一章では 《少女の友》 創刊号の翻案を 史上初めて論考、
二章を読めば 「蒲団」 の読み方が確実に変わる。
三章は 《幼年の友》 のリライトの 全面紹介。
シリーズ〈永代静雄 作品研究〉1
A5版、100頁。2007.11.刊行。
送料込 1000円 (うち送料 210円。頒布終了)
(ご興味ある方は国会図書館本館、国際子ども図書館、日本近代文学館、
神奈川近代文学館、大阪府立図書館内国際児童文学館等でご覧下さい)
→ 『 「アリス物語」「黒姫物語」と その周辺』 人名索引
→ 『 「アリス物語」「黒姫物語」と その周辺』 補 訂 表
→ 〈永代静雄入門〉(2014.〜)・〈永代静雄 研究余禄〉(2007.)を見る。
日本に初めて『不思議の国』を紹介した男・永代(静雄が語る女性像
『解題 女皇(クレオパトラ/大ナポレオンの妻 』
「妖艶豊麗遙に吾が淀君に優り、唐の楊貴妃に超ゆ。清少納言を卑しとし、〔……〕
支那の西太后等を小なりとす。」 大正三年、奈翁会(ナポレオン顕彰の会)刊行
のクレオパトラ伝。 「ジョゼフィーヌは 女らしい女であつた。日本の古武士の妻
としても立派な女であつた。」大正五年、実業之日本社刊行の仏国皇后一代記。
目 次
序説 浅草電気館の 「アントニーとクレオパトラ」
『女皇クレオパトラ』 の粉本 全体の構成
永代静雄の 「貞操」 観と人物評
一、「御座船の中なるは女神か」 『アントニーとクレオパトラ』 より
「絹に銀糸のみやこ草」 御座船の帆の謎
二、「シーザー棺前の一大演説」 『ジュリアス・シーザー』 より
三、「偉人シーザー最後の光景」 マーク・トウェインの 「シーザー殺害」 より
四、「蓆(むしろ)に裹まれて偉人に投ず」 プルタルコス 『英雄伝』 より
楠山正雄訳 『シーザーとクレオパトラ』
五、「美と悪徳との遺伝」 プトレマイオス王朝譜
六、「背景たるべき埃及」 プルタルコス 『モラリア』 より
「アスプとクレオパトラ」
七、「盃一杯の値二十二万二千弗」 クレオパトラの饗宴
八、「死して尚ほ美はし」 再び 『アントニーとクレオパトラ』
『大ナポレオンの妻』 解題
『女皇』は、多くの場面でシェイクスピアの『アントニーとクレオパトラ』の本邦初訳である。
プルタルコスの初期翻訳、プトレマイオス朝を紹介した初期の文献としても貴重な資料。
シリーズ〈永代静雄 作品研究〉3
A5版、76頁。 2006.9.刊行。
送料込 800円 (うち送料 180円。頒布終了)
(ご興味ある方は日本近代文学館または
兵庫県の三木市立図書館でご覧下さい)
→ 『解題 「女皇クレオパトラ」』 正 誤 表
〈赤本叢書〉既刊
革命渦中の中華民国にヒコーキ少女は満州国の夢を見るか?
復刻版 『愛国小説 満朝(の花』
明治41年 《少女の友》 創刊号から 『アリス物語』 を連載した先見の明ある新聞記者・永代静雄が
大正2年、やっぱり 《少女の友》 に発表した幻の 軍事冒険(?)政治小説。
闘う少女パイロットを描いた、最初期の小説でもあります。
むかしライト兄弟の伝記は読んだ、一次大戦での飛行機の活躍も知っている、
でも、その間に何があったかはわからない、という方
中国の近現代史に興味のある方も、ぜひ一読を!
シリーズ〈永代静雄 作品研究〉2
A5版、76頁。 2002.9.発行。 (頒布終了)
(ご興味ある方は大阪府立中央図書館または
同館付属の国際児童文学館でご覧下さい)
『満朝の花』ありがちQ&A
Q アリス・ファンは、ふつう中国の現代史に関心ないと思うんですけど …
A ないでしょうね(笑) でも関係ないと思うから関係ないので、関係ある
と思えばありますよ(笑) 例えば ラスト・エンペラー 溥儀(プー・イー)は
アリスの物語を知っていたか? といえば、これがなんと、よく知ってました。
英語の教科書に『不思議の国』を使ってたからです。これは家庭教師だった
R.F.ジョンストンの趣味なんですけどね。『紫禁城の黄昏』とか読まれた方は
ご存じでしょうが、ジョンストンは中国をよく『不思議の国』に例えてます。
Q 「愛国小説」なんて、ぶっそうですね …
A もともとがそういう題名なんですから、しょうがない(笑)
でもまぁ第二次大戦前には「愛国」は、ふつうの言葉ですよ。
ジャンヌ・ダルクには必ずといっていいほど「愛国少女」と冠せられたし、
アルセーヌ・ルパンだって「怪盗紳士」よりは「愛国紳士」だった(笑)
今あげた例は どちらもフランス人ですけど、「愛国」が もともと外来の
概念だ ってことにも注意してもらいたいですね。 実は『満朝の花』でも
清朝の復活を願う「満人」の少女の愛国心が描かれてるんです、基本的には。
「日本歴史」(皇国史観)の輸出が中国を救うみたいな発想もからんでくるのが
今読むとキツイとこですけどね。「ランちゃん! これからがあなたの舞台よ、
あなたの死に時よ」みたいなシビアな場面では不覚にも小生、爆笑しました。
「爆裂弾を?……ほほほ」とか「運がないのぢゃないわ、金がないのよ」とか、
少女戦士のセリフ回しに、ぞっこんです。現在の読者で、これ読んで愛国心が
高ぶるって人は、あんまりいないでしょうね。まぁ永代静雄の小説の中でも
あえて「愛国小説」を復刻したのには、最近の右傾化したヲタク連中が
勘ちがいして買ってくれることを期待した面もあったんですけどね(笑)
Q そんなの「少女小説」といえるんでしょうか? …
A 「少女小説」という言葉自体、大正2年前後に発生したといっていいかと
思うんです。明治末に「恋愛小説」が、ふしだらだと攻撃されて、いわば使用禁止になり
「家庭小説」と「少女小説」に分化した。だから、まだ「少女小説」の枠組みそのものが
はっきりしない時代の作品です。 …といっても、こういう系譜は戦前、けっこう続くんで、
まるっきり特異な作品というわけでもない。近年のコバルト文庫のように冒険ファンタジーが
一流派となった現在からみると、案外「少女小説」の原点のひとつかなという気もしたり。
そもそも少女パイロットというポップな発想が、マンガやアニメの世界観に近いですしね。
といっても物語としては単純粗雑だし、恋愛要素など全くないことはお断りしておきます。
Q 復刻版では「満州」と「満洲」という表記が、ごっちゃになっているようですが …
A 一応、編者(小生)自身の解説には「満州」、資料からの引用では「満洲」と区別して
表記しています。「洲」には「州」にない「大陸」という意味があって、本来は別の字
(つまり「満洲」のほうが正しい)と考えるべきですが、そうすると「欧洲」とか
「五大洲」とか書かねばならなくなり、現在の読者にはちょっと、うっとうしい。
ですから、あえて変則的な用字法を採用しているわけです。
→ 『満 朝 の 花』 正 誤 表
明治大正から平成まで数限りないアリス抄訳本から奇訳怪訳珍場面を精選!
『Alice in Trash Basket』
『不思議の国』を読んだこともないような初心者から、
かなり ディープなマニアまで、 それぞれに
たのしんでいただけるヴィジュアル本です。
これを読まずして、アリスの翻訳は語れない?!
正統派ファンも、それほど正統でない方も必携の1冊!!
A5版、44頁。 2001.8.発行。
(頒布は終了しました。)
『トラ バス』ありがちQ&A
Q サイトの訳註に書かれてるようなことが書いてあるんですか?
A サイトの内容とこの私家本の内容に、ほとんど重複はありません。
サイトの訳註は完訳本のあいだの微妙な問題がテーマですが、
こちらは雑多なリライトの「超訳」を笑いとばそうというものです。
Q ヘタな翻訳を小馬鹿にした本なんですか?
A 愛情をもって、ほめ殺しにしてます(笑)
しかし翻訳能力の低さを あざ嗤うものでは全くありません。
むしろこんな「翻訳」がありえたのかと感心するくらいのものを選んでいて、
読まれた方の中には これは真の意味での名訳・名場面集ではないかとの
感想をもつ向きさえあります。実はこの本には、アリスを日本に移植するとは
どういうことか? という隠しテーマもあり、翻訳(翻案)者や挿絵画家たちが
半ば無意識に行うさまざまな「日本化」をユニークな事例で紹介しています。
近刊予告
『永代静雄の奇想小説(仮)』
知られざるエンターテイナー永代静雄は、プリミティヴな探偵小説を書いていた。
かつて『アリス物語』が連載されていた《少女の友》には、永代と入れ替わるように
森下雨村(のちの《新青年》初代編集長。江戸川乱歩らを発掘)が デビュー、 新時代
を切り拓いてゆく。 (『少女小説バクテリア/天体旅行とその周辺』の予定を改題)
シリーズ〈永代静雄 作品研究〉4
A5版。刊行年月未定。
→ 「森下雨村 と 永代静雄」 のページへ
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